深緑の黒色戦争
BGM
bitter sweet
脚本家
親衛隊
投稿日時
2015-07-05 11:35:43

脚本家コメント
戦いの火蓋が今――切って落とされた(誇大広告)
前作 世界制服
http://m.ip.bn765.com/app/index.php/drama_theater/info/uid/1300000000000031424/seq/376

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水瀬伊織
「お店のテーマよ!」
北沢志保
深緑の森の中、小さな喫茶店。その店内。
北沢志保
高らかに響いた店長の声に驚いたのか、外にいる鳥も歌うのをやめてしまったようだ。
北沢志保
「……えっと、テーマというのは?」
水瀬伊織
「猫よ」
北沢志保
「はあ……」
水瀬伊織
「巷には『猫カフェ』なるものがあるらしいわね」
北沢志保
「いつも持ち歩いてるんですか。その雑誌……」
水瀬伊織
「細かいことはいいの。ところで、あんたは知ってる? 猫カフェ」
北沢志保
「耳にしたことはありますけど、どういうものかは……」
水瀬伊織
「普通に考えれば、猫がいるカフェよね」
水瀬伊織
「で? それだけ?」
北沢志保
「いえ、だから知らな……っ!?」
北沢志保
突然、外からけたたましいほどの動物の声が聞こえてきた。
北沢志保
先程までの静けさとは一転して、辺りの鳥たちも騒ぎ出す。
水瀬伊織
「と、噂をすれば猫ね。近くで喧嘩でもしてるんでしょ」
北沢志保
「ちょっと見てきます!」
水瀬伊織
「はぁ? ちょ、待ちなさ……!」
北沢志保
言葉よりも速く動いて、扉を開けて見渡せば――
北沢志保
「……!」
北沢志保
そこには足を引き摺りながら威嚇する黒猫と、その様子を見下すカラスの姿。
北沢志保
体躯の差は歴然。じわじわと弱らせて捕食するつもりなのだろう。
北沢志保
助けないと!
北沢志保
「ネコさん!」
北沢志保
駆ける――躊躇いなど捨てて。両者の視線が交差する場所を目掛けて。
北沢志保
その先など考えず、ただ一直線に――
北沢志保
「……っ!」
北沢志保
咄嗟のことで忘れていたが、ここは深い深い森の中。
北沢志保
地面には縦横無尽に木の根が張り巡らされている。
北沢志保
足元すら見ずに闇雲に走れば、当然躓く。おまけに転ぶ。
北沢志保
私は見事なまでのヘッドスライディングを上々ご覧に入れてみせた。
北沢志保
勃発した黒色たちの戦争は、突如現れた乱入者により、あっという間に終戦を迎えた。
北沢志保
「うぅ……」
北沢志保
辛勝だった。……転んだだけなのに。
北沢志保
死闘を終えた戦場に咲く一輪の徒花。それが今の私だ。
北沢志保
なんとも情けない姿だろう。結果的には良かったのかもしれないけれど。
水瀬伊織
「あーっ!」
北沢志保
今日は似たような声をよく聞く気がする。そんなことを思った。
水瀬伊織
「あんた馬鹿でしょ! せっかくの制服、こんなに汚しちゃって!」
北沢志保
「ご、ごめんなさ……っ」
北沢志保
こつんと拳骨。
水瀬伊織
「もうっ……。怪我はない?」
北沢志保
「はい、幸いなことに。……結局、私ってば無駄骨でしたね」
水瀬伊織
「そうかしら? 得るものもあったんじゃない?」
北沢志保
「え?」
水瀬伊織
「ほら、あれ」
北沢志保
じーっとこちらを伺っている黒猫がいた。
水瀬伊織
「あんたにお礼でも言いたいんじゃないの?」
北沢志保
店長の言葉に呼応したかのように、黒猫は顔をゆっくり上げて、
北沢志保
ひょこひょこと歩きだし、私の足に頬を摺り寄せた。

(台詞数: 50)