水瀬伊織
薄暗い明かりの下、テーブルの上。
水瀬伊織
何度も読んだ古い絵本。
水瀬伊織
表紙に描かれたお姫様。
水瀬伊織
いつだって彼女が羨ましかった。
水瀬伊織
魔法。
水瀬伊織
笑顔。
水瀬伊織
そして……幸せ。
水瀬伊織
私の欲しいものが、そこにはあった。
水瀬伊織
――――――
水瀬伊織
最初はなんとも思わなかった。
水瀬伊織
馬鹿で変態でどうしようもない、その他大勢。
水瀬伊織
その程度の人だった。
水瀬伊織
けれど、いつからだろう。
水瀬伊織
あんたに話し掛けるようになったのは。
水瀬伊織
いつからだろう。
水瀬伊織
あんたを目で追うようになったのは。
水瀬伊織
いつからだろう。
水瀬伊織
あんたに惹かれるようになったのは。
水瀬伊織
いつから……だろう。
水瀬伊織
あんたを見る度、胸が苦しくなったのは。
水瀬伊織
焦燥? 不安? それとも寂しさとか?
水瀬伊織
私の中で渦巻く黒いモノに怯えて蹲った。
水瀬伊織
そんな時でも、隣にはあんたがいた。
水瀬伊織
いつだって、あのオレンジに染まる事務所で。
水瀬伊織
あんたは私の手を取って。
水瀬伊織
優しい言葉と魔法をくれた。
水瀬伊織
――――――
水瀬伊織
薄暗い明かりの下、テーブルの上。
水瀬伊織
何度も読んだ古い絵本。
水瀬伊織
表紙に描かれたお姫様。
水瀬伊織
いつだって彼女が羨ましかった。
水瀬伊織
魔法。
水瀬伊織
笑顔。
水瀬伊織
そして……幸せ。
水瀬伊織
私の欲しいものが、そこにはあった。
水瀬伊織
でも今は、ね……。
水瀬伊織
部屋に響くノックの音。
水瀬伊織
夢のような日々の、夢のような心地。
水瀬伊織
もしかしたら目の前の王子様も夢かもしれない。
水瀬伊織
頬を抓ってみる。……二人きり。
水瀬伊織
だから私は、返事を待たずに部屋に入ってきたあんたに告げる。
水瀬伊織
「馬鹿」でも「変態」でもない。
水瀬伊織
「おかえりなさい」って。
水瀬伊織
……ああ、きっと今、私は心から笑えている。
水瀬伊織
愛しさが込み上げて顔が熱くなる。
水瀬伊織
照れ隠しに、あの時のお返し。
水瀬伊織
ちょっと背伸びするかもしれないけど、いいわよね?
水瀬伊織
私があんたという王子様の為に使う、幸せの魔法。
水瀬伊織
それは小さな勇気と……少しの間の暗闇。
水瀬伊織
そして、大きな愛情。
(台詞数: 50)