女子、二人並び立てば 第2話『自由』
BGM
READY!! (M@STER VERSION)
脚本家
遠江守(えんしゅう)P
投稿日時
2017-11-01 00:00:37

脚本家コメント
急ぎますが、とりあえず出来次第の更新です。

コメントを残す
周防桃子
いつも通りの事務室。だけど、そこにただよう空気は、重く張りつめていて。
周防桃子
入った瞬間に感じる、肌を刺すようなぴりっとした緊張感は、桃子にも覚えがあるものだった。
周防桃子
そして、桃子の前に何人か先に来ていた顔ぶれを見れば、それはもう確信に変わる。
周防桃子
…ああ、始まるんだね。
周防桃子
ライブバトルトーナメントの優勝者と準優勝者が出場できる『究極のトーナメント』。
周防桃子
準備に時間がかかるからって、最後の第四回が終わってから、かなりの時間が経っていた。
周防桃子
だけど、桃子も、たぶん他の人たちも、一日だって忘れたことはない。
周防桃子
この究極のトーナメントは、765プロのナンバーワンを決める戦いだから…。
周防桃子
桃子たちは同じ劇場の仲間で、トップアイドルを目指すライバル同士という関係でもある。
周防桃子
だから、ただこの大会だけのナンバーワンだとしても、それはすごく価値があるものだった。
高木社長
「…さて、諸君。」
周防桃子
そして、いつものように。出場者全員がそろったところで、社長さんが話を切り出した。
高木社長
「待たせたね。ついに、究極のトーナメントの準備が整ったよ。」
高木社長
「今回は、ドーム会場を使って、大々的にやるつもりだ。」
高木社長
「会場の大きさに位負けしないよう、精一杯頑張ってくれたまえ。」
周防桃子
その言葉に、みんながうなずく。ドームと聞いても気後れしないほどの、自信を感じさせて。
周防桃子
…もちろん、桃子だって。ドームのファンを、全員トリコにしちゃうつもりだよ。
周防桃子
気合の入った桃子たちを見て満足そうにして、社長さんは話を続けていく。
高木社長
「では、ルールについて説明しよう。」
高木社長
「先の大会では、公平性を保つために様々な制限があったが、今回はそれらを無くそうと思う。」
高木社長
「何を歌うかも自由。衣装も自由。演出も舞台装置も自由だ。」
高木社長
「…もっとも、予算や準備期間のこともあるから、事前に相談はしておいてほしいがね。」
周防桃子
そう言って苦笑いしたのは、これまで社長さんが、色々な人のルール違反に振り回されたからかな?
周防桃子
もしかして、桃子もその一人と思われてるかも。桃子なりに筋は通したつもりなんだけどな。
周防桃子
まあ、今はそんなこと、どうでもいいよね。それより、今回のルールだけど。
周防桃子
自由、か。何でもありって聞くと、逆にやりにくいな…。
周防桃子
作戦を立てたくても、相手の方も何をしてくるからわからないから、どうしようもないし。
周防桃子
…まあ、だれと当たるかも決まってないのに、相手のことを考えていても、意味は無いよね。
周防桃子
とりあえず、自分が何をするのか。それだけは、しっかりと考えておかないと…。
高木社長
「次は、今大会から追加される、特別ルールについて、説明しよう。」
高木社長
「二人のアイドルが同時に歌って勝敗を決する『フェス』方式のバトルを導入させてもらう。」
周防桃子
フェス…!実力差がその場ではっきりと見えてしまうから、桃子には不利な方式かも…。
高木社長
「ただし、これは双方の同意があった場合のみだ。」
高木社長
「そうでない場合は、これまで通り通常の試合形式で勝負してもらうことになる。」
周防桃子
…なるほど。フェスがいやなら、断ることもできるんだ。
周防桃子
でも、そんなの、相手から逃げてるみたいで、カッコ悪く見えちゃうよね…。
高木社長
「…そして対戦の組み合わせだが。これも自由だ。」
高木社長
「順番を決めるくじを引いて、その番号順に対戦表の好きな位置を埋めていくことができる。」
高木社長
「戦略でも、因縁でも、何でもいい。弱い者を狙うも、強い相手に挑むも、好きにしたまえ。」
周防桃子
それを聞いて、桃子は背筋をぴんと伸ばした。
周防桃子
他の『自由』はともかく、これは、桃子にとっても希望がある話だったから。
周防桃子
戦いたい相手…。美希さんとは、しっかりと決着をつけたいと思う気持ちもあるけど…。
四条貴音
「……。」
周防桃子
貴音さんと視線を合わせて、おたがいうなずく。
周防桃子
…やっぱり、桃子は貴音さんと戦いたい!
周防桃子
この人のすごさを、もっと感じたい。外からじゃなくて、自分自身で正面から受け止めたい!
周防桃子
それが、桃子が貴音さんを見続けてきて、ずっと心に思っていたことだった。
高木社長
「善は急げだ。この流れで、順番のくじを引いてもらうとしよう。」
周防桃子
社長さんの言葉に、桃子は一番に手を挙げて、前に進み出る。
周防桃子
幸運も不運も、残されたものを拾うんじゃなくて、自分の手で。それが、桃子のスタイルだから。

(台詞数: 50)