四条貴音
とうとう参りましたね。ここが、かの国。
高坂海美
はい。
高坂海美
姫様、お疲れではありませんか?この辺りで少しお休みになられては。
四条貴音
わたくしなら心配はいりませんよ、体力には自信があります。
四条貴音
それに。囚われの身となったあの方の苦労を思えば、これしきの事など。
高坂海美
…そうでしたね。では、先を急ぐとしますか。
四条貴音
ええ。行きましょう、あの方を救いに。
高坂海美
…
高坂海美
(お淑やかな箱入り娘だった姫様は、あの敗戦から変わった。)
高坂海美
(逞しく、そして勇敢になられた。敵国に囚われたあの方を、自らの手で救い出そうと。)
高坂海美
(だからこそ、いつかは伝えなくてはならない。)
高坂海美
(あの方は、敵国に囚われたりなどしていないという事は。)
高坂海美
(そう…王子は、既に亡くなっている。)
高坂海美
(あの戦争で、命を落としたのだ…それも、私を庇って。)
高坂海美
(本来ならば、あの時姫に伝えるべきだった。けれども。)
高坂海美
(国が滅びた事を嘆く姫に、この上大切な人間を失ったと伝える事は、どうしても出来なかった)
高坂海美
(それ故に、嘘をついた。あの方は死んではいない、敵国に囚われたのだと。)
高坂海美
(それを聞いた姫は、それまでとは別人のようになっていった。全てはあの方を救うために。)
高坂海美
(そして。私達は遂に敵国にまで。これ以上旅を続ける事は危険であり無意味だ。だから…)
高坂海美
(私は罰を受けなくてはならない。姫様の為だった、などという言い訳は通じまい。)
高坂海美
(主君を欺き、ここに来るまでに並大抵でない苦労をさせた。)
高坂海美
(そのあげく、全ては嘘だったのだ。殺されても仕方があるまい。)
高坂海美
(けれども…。)
高坂海美
(私はそれでも、姫様に生きていて欲しかった。偽の希望を与えてでも、前を向いて欲しかった。)
高坂海美
(私はきっと、怒りに満ちた姫の怨嗟を浴びながら、殺される事になるだろう。だがかまわない。)
高坂海美
(願わくば。姫様が私への恨みと怒りを生きる力へと変え、これからも生きていかん事を…)
四条貴音
…海美?どうしたのです、参りますよ?
高坂海美
…姫様。
高坂海美
少し、よろしいですか?
(台詞数: 29)