四条貴音
──お貴はいつもより早くうどんを食べ終えた。
四条貴音
祖母のことが気になって仕方なくゆっくりと味わうことができなかった。
ロコ
「お貴、今日は一体どうしたんだい?帰ってきてからというもの、何か変じゃないか?」
四条貴音
──変なのは祖母の方だ。っとお貴は心の中でそう思った…。
ロコ
「私が変だって?お貴も冗談をいうようになったもんだね」
四条貴音
どうやら意識しすぎたせいで声に出してしまったらしい。
四条貴音
お貴は意を決して祖母に聞いた。
四条貴音
「あの…おばあさまはどうしてずっと背を向けてらっしゃるのですか?」
四条貴音
すると同時に、まるで忠告するかのように雷が鳴り始めた。
ロコ
「私が背を向けようと勝手だろう。それとも、どうしても理由が聞きたいのかい?」
四条貴音
ここまでくるともう後には引けない。
四条貴音
「教えていただけませんか?でなければ今日は夜も眠れなくなってしまいます」
四条貴音
はぁ…とお路はため息をつくと私に聞こえるかどうか小さな声で
ロコ
「三年前の時も同じような天気だったねぇ」と呟いた。
四条貴音
一体何を言ってるのか理解できなかった。それよりも好奇心の方が優っていたからだ。
ロコ
「たいした理由なんてないよ。ただ背を向けたかったから…それだけだよ。」
四条貴音
──本当にそれだけだろうか?お貴はそう疑問に思った時…
ロコ
「あぁ、それとだね。お貴には今まで黙ってたんだけど…」
ロコ
お路はゆっくりと言葉を発しながら背を向けてた体をこっちに向けてくる。
ロコ
「私はね…」
ロコ
「私はね…おばあちゃんじゃなくて……」
ロコ
「私はね…おばあちゃんじゃなくて……ロコですから!!!」
四条貴音
そう言い放つと、戸は破れ、壁は崩れ、嵐のような風が吹き荒れる。
四条貴音
瞬く間に家は崩壊し、激流が私を飲み込んだ。
四条貴音
ごぼごぼと溺れていく私が目にしたのは、激流に流されず、薄っすらと笑うお路…ロコの姿だった。
四条貴音
どうしてと考える余裕もなく、お貴の意識が薄れていく。
四条貴音
「うわぁあああああああああああああああああああ!!!」
四条貴音
お貴は勢いよく布団から飛び起きた。
四条貴音
はぁ…はぁ…と息も荒い。
四条貴音
無理もない。夢とはいえ恐ろしい出来事を体験してしまったのだから。
四条貴音
ホッと安心し、一息ついたとき…
ロコ
「どうしたんだい?そんなに慌てて。怖い夢でも見たのかい?」
四条貴音
お貴は背筋が凍った。
四条貴音
お貴の後ろからロコ……お路の声が聞こえた。
四条貴音
「いえ、何でもありません…」
四条貴音
当り障りのない受け答えをするが、私の声は震えている。
四条貴音
目の前には壁、後ろにはお路がいる。
四条貴音
お貴は先ほどの夢のことを思い出し、怖くなって振り向けなかった。
四条貴音
そして、そんなお貴を嘲笑うかのように雨風が吹き荒れていた。
(台詞数: 39)