四条貴音
おや?
エミリー
……。
四条貴音
……申し訳ありません。生憎と異国の言葉は心得ておらず。
エミリー
……大丈夫、です。言葉……伝わってます。
四条貴音
安心しました。日本語がお上手ですね。
エミリー
ごめんなさい。もっと早く喋れば良かったのですが……
エミリー
恥ずかしながら、その……お化けと見間違えてしまいまして……。
四条貴音
ふふ、無理もありません。このような場所ですから。
四条貴音
社へは、どのような御用で?
エミリー
興味本位です。半分だけ。
四条貴音
半分?
エミリー
はい。お家に独りで居ると、つい故郷の事を考えてしまいますから。
エミリー
そこで、息抜きに日本の文化に触れようという考えに至った次第です。そちらが残り半分ですね。
四条貴音
成程。望郷の念、痛い程に解ります。
エミリー
もしや、あなた様も何処か遠くの生まれなのですか?
四条貴音
そのようなものです。
エミリー
奇遇ですね。これも運命でしょうか。
四条貴音
運命……ふむ。
エミリー
どうかなされたのですか?
四条貴音
……そうですね。こうして出会ったのも何かの縁。一つ、頼みを聞いていただけませんか?
エミリー
頼み?
四条貴音
実は以前、社を訪れた貴女と同じ金色の髪の人げ……方を思い出しまして。
四条貴音
その時、心に"樂"を与える職の話を耳にしたのです。
エミリー
樂……楽しい、ですか?
四条貴音
はい。こちらでは"あいどる"と呼ばれているそうな。
エミリー
存じております! 大和撫子ですね!
エミリー
煌びやかな衣装を身に纏って舞い、歌を歌う。私の憧れです!
エミリー
将来、私もあのような場に立ち、ごヒイキ様方に喜んでいただくのが夢なんです。
四条貴音
ふふ、そうでしたか。
エミリー
ご、ごめんなさい。熱くなってしまって。
エミリー
して、頼みとはどのような内容でしょう?
四条貴音
この社には小さな舞殿があります。
エミリー
舞殿。
四条貴音
古きは慣習に倣い、巫女達が舞楽を嗜んでいたのでしょう。
エミリー
なるほど。あちらは舞台なのですね。
四条貴音
どのような型でも構いません。私を一人の観客に見立て、貴女に舞っていただきたいのです。
エミリー
その……理由を、お尋ねしてもよろしいですか?
四条貴音
「"あいどる"とは樂しいもの」と伺っております。純粋に、その心を知りたいのです。
エミリー
……。
四条貴音
……。
エミリー
畏まりました! まだ未熟者ですが、謹んでお受けいたします。
四条貴音
ありがとうございます。
エミリー
ですが……よろしければ、あなた様も一緒に。
四条貴音
私も、ですか?
エミリー
大和撫子は一日にして成らず。故に、理解するならば一刻でも多く触れる事が大切だと思うんです。
四条貴音
……成程。得心しました。
四条貴音
では、共に参りましょうか。
エミリー
はいっ。
エミリー
沢山、楽しみましょうね。
(台詞数: 49)