四条貴音
妖とは人の目に映らないもの。
四条貴音
映らないとは、限りなく俗世に溶け込んでいるという意味です。
四条貴音
古来より『妖は人を喰らう』とされ、人々の間で恐れられておりました。
四条貴音
それも所詮、今は古き世の話。
四条貴音
人が大半を占めるこの俗世に於いて、一時の欲に溺れ、自ら首を絞めるなど愚の骨頂。
四条貴音
故に我々は最も合理的な手段として、人との共存の道を選んだのです。
中谷育
「ねえさま、ねえさま」
四条貴音
「どうしましたか」
中谷育
「また、こわれてしまったの」
四条貴音
「どれ……」
四条貴音
「……大きな石のある所では、強くつかぬよう用心しなければなりませんよ?」
中谷育
「ごめんなさい……。なおる?」
四条貴音
「大丈夫。撚糸が切れているだけです」
四条貴音
「育、次はどのような柄が良いですか?」
中谷育
「えーと、えーと、秋だからもみじがいい!」
四条貴音
「ふふ。わかりました」
四条貴音
「……しかし、もう秋なのですね。季節の移り変わりのなんと早いこと」
四条貴音
「育、人は楽しいですか?」
中谷育
「うん! さいしょはみんなから『のけもの』にされてたけど……」
中谷育
「友だち、いっぱいできたよ」
中谷育
「みんな、まりが上手で、いつもお外であそぶの」
四条貴音
「……そう、ですか。それは良いですね」
四条貴音
妖は、同じ地に留まりません。
四条貴音
『人外』と悟られてはならないのです。
四条貴音
春が訪れる頃には、渡り鳥のように新たな場所へ。
四条貴音
私たちの祖先は皆、そうやって人の目を欺いてきたのです。
四条貴音
育。私の可愛い妹。
四条貴音
例え血の繋がりなど無くとも、私たちは家族の絆で結ばれております。
四条貴音
育。可哀想な私の妹。
四条貴音
四季の経過より早く訪れる離別を受け入れられるあなたは、私よりもずっと心が強いのでしょう。
四条貴音
せめて、その笑顔の裏に隠れた悲哀を、少しでも晴らせるように──
四条貴音
「はい、直りましたよ」
中谷育
「かわいい! これでまたみんなとあそべるね!」
四条貴音
"繋がり"など、幾らでも用意しましょう。
四条貴音
この毬を通じて人を愛せるように。
四条貴音
そして、あなたが俯かないように。
四条貴音
私はあるのです。
(台詞数: 37)