夏霞22:霞
BGM
風花
脚本家
concentration
投稿日時
2016-08-24 23:38:49

脚本家コメント
ここまで繋いで参りました、リレードラマ「夏霞」。
いよいよ次よりクライマックス、ちゃんPによる締めのお話へと突入です。
前作、賑やか楽しいチルノスカーレットPのカレー大会はこちら。
http://imas.greeーapps.net/app/index.php/short_story/info/uid/500000000000007042/seq/1909
『風花』は冬の曲やでぇ……。

コメントを残す
春日未来
朦朧とした寝起きの思考に、湿気混じりの暑気が
春日未来
ねっとりと粘りつく。
春日未来
眼前の卓袱台の上、プリントに広がる、よだれの海。
春日未来
「…………終わんないよう。」
春日未来
一枚終わらせては睡魔に抗い、一頁進んでは睡魔に屈し、
春日未来
「まだ半分も終わってないよ………。」
春日未来
積み上げられた課題の山に絶望する事、幾度となく。
四条貴音
「春日未来、まだ時間は充分に有ります。挫けてはなりませんよ。」
春日未来
晩夏の午後の暑さも課題の行く末も知らぬ、という呈の涼やかさで、貴音さんは言う。
春日未来
事務所の学生組で唯一課題が終わらず、自室でのたうち回っていた所に、
春日未来
本日たまたま予定の無かった貴音さんからの、助けてくれるというお達し。
春日未来
静香ちゃんが仕事前に当たってくれたらしい。さすが親友。
春日未来
『貴音さん頭良さそうだから、全部片付けてくれちゃうかも。ラッキー!』
春日未来
意気揚々と貴音さんの下宿にお邪魔して、レッツスタディ!
春日未来
………お察しの通り、貴音さんはあくまで『助けてくれる』のみ。
春日未来
いや、本当に分からない所を聞けば、懇意に教えてくれるのだけど(英語以外)。
春日未来
本当に終わるのかな、コレ。
春日未来
しかもここ、クーラー無いし。
春日未来
貴音さんらしいと言えばらしいけど、文明に毒され尽くした我が身には、些かキツい。
春日未来
つい、と首筋を汗が伝う。
春日未来
と、察したのか、
四条貴音
「少しの辛抱を。あと二頁終わらせたら、冷たい物を持って来ましょう。」
春日未来
「わーい、貴音さん大好き!」
春日未来
アイドル春日未来は、眼前に人参があるのを確認すると、走力が三倍になるのだ。
春日未来
………………。
春日未来
「あー、夏はやっぱこれだよー。」
春日未来
冷えたラムネの爽快感を堪能しつつ、だが視界の端には、現実未だ崩し得ぬ課題の山。
春日未来
「きびしーなぁ……。せめてあと三日くらい猶予があればなー。」
四条貴音
「おや、三日有れば終わらせられますか?」
春日未来
「そ、そりゃそんだけ時間があれば……」
四条貴音
「独力で?」
春日未来
「………それは無理。」
四条貴音
「では永遠に終わりませんね。如何にしますか?」
春日未来
「え?イカニシマス…………って」
春日未来
不意に湧き上がる眩暈の様な感覚は、昼下りの暑さの所為か、
春日未来
それとも、
春日未来
手に持ったラムネ瓶の中、カラン、と転がるビー玉が、
春日未来
西陽を弾いて、篭った光を纏う。
四条貴音
「春日未来、忘れなき様に。」
四条貴音
「夏休みの最後の一日など、貴方の人生の只の一日でしかありません。」
春日未来
貴音さんの声に、蝉時雨が滲む。
四条貴音
「新たな一日へと進む事こそ、貴方にとっての大事となるでしょう。」
春日未来
よくよく耳を澄ませば、微かに混じる、鈴虫の音。
四条貴音
「易きに逃げるも貴方の選択、私に止める術はありません。」
春日未来
単調な虫達の調べが誘い、頭の中に浸食する、白い靄。
四条貴音
「永遠に進まぬ今を望むのか、次なる一歩を踏み出すのか。貴方自身が………」
春日未来
一面霞で埋め尽くされた意識の
春日未来
遠くから、聞こえる、微かに。
春日未来
私を呼ぶ声が。

(台詞数: 49)