女子、三日会わざれば⑫『思惑』
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脚本家
遠江守(えんしゅう)P
投稿日時
2016-06-13 00:41:38

脚本家コメント
次回、可憐のライブパート

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周防桃子
「…それで、貴音さんは何をたくらんでるの?」
周防桃子
舞台袖からレッスン場に戻って、ふたりきりになったところで、桃子は貴音さんを問いつめた。
四条貴音
「はて、企む、とは…?」
周防桃子
「とぼけないで。桃子を手助けしたのには、何か理由があるんでしょ?」
周防桃子
桃子をはげまして立ち直らせただけなら、そんなことは考えなかったと思う。
周防桃子
でも、静香さんの弱点をついて桃子を勝たせたのは、はっきり言ってやりすぎなくらいだった。
周防桃子
静香さんにうらまれるかもしれないのに、それでも桃子を助ける理由?
周防桃子
それがわからないのによろこんでいられるほど、桃子は単純じゃない。
周防桃子
じっと見つめる桃子の目の前で、貴音さんは何を考えているかわからない顔を笑いでくずした。
四条貴音
「ふふっ…。桃子は、鋭いですね。確かにわたくしには、目的があります。」
周防桃子
目的?やっぱり、何かあるんだ…。
四条貴音
「ですが、それを聞くことは桃子にとって重要なことなのでしょうか?」
周防桃子
貴音さんのその言葉に、桃子は少し考える。
周防桃子
こう言ってるってことは、貴音さんは自分の目的は話したくないってことだと思う。
周防桃子
それでもムリに聞き出そうとすれば、桃子への協力をやめてしまうかもしれない。
周防桃子
これからまだ準決勝も、もし勝てればだけど、決勝もある。
周防桃子
だったら…選ぶのは一つしかないか。ちょっとシャクだけど。
周防桃子
「…重要じゃないね。ブキミなだけで。」
周防桃子
桃子のトゲのある言葉に、貴音さんはくすっと笑って。
四条貴音
「桃子にとって悪い事にはならないと、約束いたしますよ。」
周防桃子
「…わかった。それでいいよ。」
周防桃子
桃子は、とりあえずそれで話を打ち切ることにした。
周防桃子
他にも、話しておきたいことはある。
周防桃子
「それで、準決勝のことだけど…。」
周防桃子
次の相手はまだわからないけど、だれでも手ごわい相手なのはまちがいない。
周防桃子
そしてもちろん、美希さんに当たる可能性だって十分にある。
周防桃子
貴音さんに何か考えがあるのなら、早いうちに聞いておいた方がいい。
周防桃子
スケジュールを確認したけど、明日と明後日に第一回戦の残りの試合がある。
周防桃子
その次の日は、準決勝の組み合わせ抽選日。準決勝の第一試合は抽選日の次の日になる。
周防桃子
「あと、3日しかない…。」
周防桃子
たった3日。それだけの時間で、どこまでできるんだろう?
四条貴音
「三日。十分な時間ではありませんか。」
周防桃子
でも、貴音さんは、桃子がぽつりとつぶやいたことと反対のことを言ってのけた。
四条貴音
「『男子三日会わざれば刮目して見よ』と言います。」
四条貴音
「ならば、男女が平等のこの時世、女子でも同じことができるということですよ。」
四条貴音
「その三日で、桃子を準決勝の舞台に相応しいように、鍛え上げてみせましょう。」
周防桃子
そんなふうに言う貴音さんを見て、桃子はとりあえず安心した。
周防桃子
あまり取り上げられることはないけど、貴音さんだって美希さんや千早さん並みの実力者だと思う。
周防桃子
その貴音さんがこんなふうに言うんだから、きっと自信があるんだなって。
周防桃子
「貴音さんがそう言うなら、桃子は信じるよ。じゃあ、次の作戦を教えて?」
周防桃子
すると、貴音さんはいつもの、人差し指をくちびるに当てるポーズで。
四条貴音
「それは、少しお待ちなさい。ここでは、誰に聞かれるかもわかりません。」
四条貴音
「わたくしが、劇場の外に練習場を手配しておきました。」
四条貴音
「これからは、手の内を隠すことも作戦のうちになりますので、詳しくはそこで。」
周防桃子
準備が良すぎるとは思った。もしかすると、桃子に近づいてきたのも最初から計算のうち?
周防桃子
…ううん、やめよう。どちらにしても、桃子は貴音さんを信用すると決めたんだから。
周防桃子
「わかった。じゃあ、そこに案内して。作戦だけでも、今日のうちに聞いておきたいから。」
周防桃子
それを聞いて、貴音さんは満足げに笑った。
四条貴音
「わかりました。ただし、今日はそれを聞いたら家に帰ってゆっくり休むのですよ?」
四条貴音
「…明日からの稽古は、おそらく桃子が思うより、各段に厳しいものとなりますので。」

(台詞数: 50)