周防桃子
「ところで、明日の静香さんとの第一回戦をどうするかだけど…。」
周防桃子
「貴音さんはどう思う?何かアドバイスしてよ。」
四条貴音
「…おや、わたくしですか?」
周防桃子
「そう。桃子に『ありとあらゆるものをぶつけろ』って言ったでしょ?」
周防桃子
「だから、貴音さんの力も使わせてもらうの。桃子だけの力じゃ足りないから。」
周防桃子
「ルール的には、お兄ちゃんへの相談は禁止だけど、貴音さんなら問題ないよね?」
周防桃子
…まあ、ズルいかなって思うけど、なりふりかまっていられないもんね。
周防桃子
最初の戦いに勝たなければ、美希さんに負けることだってできないんだから。
周防桃子
それに、美希さんのことで頭がいっぱいだったけど、静香さんだってかなりの強敵だ。
四条貴音
「ふふっ…。桃子も、なかなかにしたたかですね。」
四条貴音
「そうですね…。わたくしが焚きつけた責任もありますし、ここは協力いたしましょうか。」
四条貴音
「ただし、わたくしの言葉は桃子にとって耳に痛いものも多いかと。それでもよろしいですか?」
周防桃子
「…いいよ。何でも言って。」
四条貴音
「わかりました。それでは…。」
四条貴音
「…桃子と静香…二人の実力の差は、桃子自身が思う程はかけ離れておりません。」
四条貴音
「正面から当たれば、おそらくは五分五分。良くて静香が六分といったところでしょうか。」
周防桃子
貴音さんの桃子への評価は、意外と高かった。
四条貴音
「もっとも、その爪先程の差が、巨大な崖となって立ち塞がる。それが勝負事の世界ですが。」
周防桃子
…そして、落とされた。つまり、ふだんの実力では勝てないよってことだよね…。
周防桃子
「じゃあ、どうすればいいの?」
周防桃子
少しあせって桃子が聞くと、貴音さんはにっこりと笑って。
四条貴音
「まずは、全力を出すことに集中いたしましょう。」
周防桃子
…全力か。そうだね。全力を出せなければ、可能性は五分五分よりもっと下がるってことだもんね。
四条貴音
「今日は練習を止めて、休みなさい。明日は体調が万全の状態で臨まなければなりません。」
周防桃子
「うん、わかった。」
四条貴音
「明日桃子が歌う予定の曲ですが、先程練習していた『DREAM』で間違いないですか?」
周防桃子
「うん。そうだけど…?」
四条貴音
「そうですか…。ところで、桃子は自分の持ち歌のそろ曲では、どちらが得意でしょう?」
周防桃子
桃子のソロ曲?それだと、この前のライブで歌ったから…。
周防桃子
「『MY STYLE! OUR STYLE!!!!』の方が、完成度は高いかな…。」
四条貴音
「なるほど。では、桃子が明日歌う曲はそれにしなさい。」
周防桃子
…えっ!?
周防桃子
「ちょっと待って、貴音さん!持ち歌は、美希さんにあたった時の切り札で…!」
四条貴音
「…これは、奇妙なことを聞きました。」
周防桃子
桃子の言葉は、貴音さんのきびしい声にさえぎられた。
四条貴音
「静香とは、余力を残して勝てる程の容易い相手なのでしょうか?」
周防桃子
「うっ…!うう…。」
周防桃子
ぐうの音も出なかった。
周防桃子
持ち歌は1回しか歌えないルールだから、切り札としてとっておきたかったんだけど…。
周防桃子
でも、たしかに。桃子がそれで、逆に静香さんが持ち歌を出してきたら、勝ち目はなくなる。
四条貴音
「勿論、従うも従わないも桃子の自由です。良く考えて答えを出すように。」
周防桃子
貴音さんはそう言ったけど…桃子は、すぐに答えを出した。
周防桃子
「…貴音さんの言うとおりにする。」
周防桃子
きびしいことは言うけど、貴音さんはウソや気休めはぜったい言わないと思ったから。
四条貴音
「ふふっ…。その顔…良い覚悟です。」
周防桃子
桃子の顔を見て、貴音さんは満足そうに。
四条貴音
「安心してください。今はまだ話せませんが、わたくしにも考えがあってのことですから。」
四条貴音
「『仕掛けは上々、仕上げを御覧じろ』、ですよ。」
周防桃子
どこかの時代劇で聞いたようなセリフを言いながら、笑った。
(台詞数: 49)