四条貴音
御機嫌よう、四条貴音です。
四条貴音
此度始まりましたこの番組、御視聴頂き、深く感謝いたします。
四条貴音
さて今宵より、都度語らせて頂きますのは
四条貴音
私が知己の方々から伺って参りました
四条貴音
其々の記憶の片隅
四条貴音
忘れ得ぬ、想い。
四条貴音
今宵語りますのは、私共の事務所にて宣材写真やいべんとの記録等御世話になっております
四条貴音
かめらまんの早坂そら嬢より頂いたお話です。
四条貴音
彼女が写真家を志したのは
四条貴音
或る一枚の写真が切掛けだったそうなのですが
四条貴音
それだけ聞けば、至極普通の話ではあります。
四条貴音
それは余程素晴らしい出来映えの作品だったのでしょうと、私が尋ねますと
四条貴音
ところがそれを撮ったのは、玄人の方では無いそうで
四条貴音
成程ぴんとは精巧とは行かず、人物の表情は逆光になっております。
四条貴音
実は私も、以前にもその写真を拝見した事が御座いました。
四条貴音
それどころか、私に限らず日本人であれば多くの方々が、一度、或いは幾度も
四条貴音
その写真を目にしていると思われます。
四条貴音
てれびのにゅーすで流れた、所謂資料としての扱いでありましたが。
四条貴音
けれどもそら少女は、その写真を見た時
四条貴音
何故か泣き出してしまったのだというのです。
四条貴音
双眸から溢れる涙を拭うのも忘れ、その写真から、一寸たりとも目を逸らせなかったのだと。
四条貴音
心を掻き乱し、惹き付けて止まぬそれは、彼女にとって
四条貴音
世界で最も美しく、そして悲しい絵だったのです。
四条貴音
いつかそんな写真を撮りたい、そんな志を胸に秘め、ぷろの写真家となり
四条貴音
彼女は日々精進を続けておりますが、
四条貴音
彼女曰く、
四条貴音
「技量が増し、経験を積む程に、寧ろそこから遠ざかっている様な気がする。」
四条貴音
そう彼女は言うのです。
四条貴音
しかし、だからこそその記憶は
四条貴音
永遠に記憶に残り続け
四条貴音
だからこそ自分は、前へ進める気がするのだと。
四条貴音
雨上がりの夜風に髪を揺らしながら
四条貴音
そう彼女は言いました。
四条貴音
朧月夜に淡く映える、菜の花畑の香りに揺られると
四条貴音
その記憶が鮮やかに、蘇るのだと。
四条貴音
遠い遠い異国の地
四条貴音
砂漠に蒔いた種が芽吹き
四条貴音
やがて一面の菜の花を咲かせました。
四条貴音
撮影者は日本人
四条貴音
伊藤和也、
四条貴音
伊藤和也、享年、31才。
(台詞数: 41)