最上静香
……もう、プロデューサー!適当なことを言って、騙すような真似、止めてください!
最上静香
北海道のパトカーは「牛柄」だなんて……実際見るまで、信じちゃったじゃないですか。
四条貴音
ふふっ。貴女にも案外、年相応に純真なところがあるではないですか、最上静香。
最上静香
からかわないでください。……大体、急遽決まったお仕事で北海道まで来るなんて、想定外です。
木下ひなた
……ごめんねぇ、静香ちゃん、貴音お嬢さん。あたしの田舎さついてきてもらって。
最上静香
あ、気にしないで、ひなた。別にひなたを責めてるわけじゃないから。
四条貴音
ひなたの街の農業祭。プロデューサーがひなたから聞いていたから、ゲスト出演できたというもの。
四条貴音
この辺りは芸能人によるイベントも少ないそうですから、皆様にとって佳き興行だったかと。
最上静香
そうですね。舞台演出もなにも無いのに、お客さんキラキラした瞳をしてましたね。
木下ひなた
……そうなんだわ。あたしの街、何にも無いところだから、どうにも恥ずかしいべさ。
木下ひなた
隣街やもうひとつ向こうの街にはね、色々有るんだわ。映画館やデパートも在るし……
木下ひなた
日本で一番沢山採れる野菜とか、コンテストで入賞したお菓子とか有るけど……あたしの街は。
最上静香
確かに道中、町境には「ワインの町」とか「日本一のじゃが芋生産地」とか、掲げられてたわね。
四条貴音
ですが、以前ひなたから頂戴したとき、立派なじゃが芋の段ボール箱で持ってきたのでは?
木下ひなた
……あれはねぇ、ばあちゃんがスーパーで貰ってきた、他所の町の農協の箱なんよ。
木下ひなた
家からあたしに送るのに、大きい箱さ無かったんだろうね。うちの街の出荷品ではないべさ。
四条貴音
……
木下ひなた
……で、でもね。なあんも無いところだけど、空気と自然くらいは良いところだべさ。
木下ひなた
街のみんなも、静香ちゃんの凄い歌や、貴音お嬢さんのきれいな姿を喜んでたんよ。
木下ひなた
あたしの親戚のみんなや同級生も、見たことないくらい歓声あげてたべさ。お二人とも凄いんだわ。
最上静香
……きっと違うわよ、ひなた。アイドルになって帰ってきたひなたが、一番歓声を受けてたわ。
木下ひなた
そんな謙遜しなくてもいいんよ。静香ちゃんの歌、ずうっと遠くまで響いて凄かったんよ。
木下ひなた
貴音さんは、天女みたいな別嬪さんだったって言われてたし……二人のお陰で盛り上がったわ。
四条貴音
謙遜……というより、ひなたは自分を卑下しすぎではないですか?自分は大したことがない、と。
木下ひなた
……
木下ひなた
……だって仕方ないべさ!あたしは静香ちゃんみたいに迫力ある歌なんて歌えないんだわ!
木下ひなた
貴音お嬢さんみたいに雰囲気を持ってるわけでも、凄い体をしてるわけでもないんよ!
木下ひなた
あたしなんて……本当は田舎でちょっと歌ってるくらいがお似合いだったかもしれんのだわ。
四条貴音
……確かにそうかもしれませんね。ひなたには『田舎』が一番似つかわしいですよ。
最上静香
ちょっと貴音さん、何を言い出すんですか!
四条貴音
今日出演した、ひなたの『田舎』。それに一番相応しいのは、ひなただと言うのですよ。
四条貴音
素朴で暖かな雰囲気が合う……それだけでなく、ひなたの街の人々には、やはりひなたが一番。
四条貴音
ひなたなければ、今日の舞台は成功しませんでした。プロデューサーに代わり、お礼申し上げます。
最上静香
……
四条貴音
それに、ひなたは私達と同じ魅力は無いと言いたいのでしょうが、それはお互い様です。
四条貴音
ひなたの性質、魅力は、私達を含め他の者では成り代われないのです。
最上静香
……だから社長やプロデューサーは、ひなたをスカウトした。そうですね。
木下ひなた
……本当かねぇ。あたしにしか出来ない事なんて、本当に有るんだろうか。
四条貴音
それは、これからプロデューサーと見出だしていけばいいことです……
四条貴音
今は、間違いなく『ひなたがこの世で一番』と言ってくれる、親御さんの元へ行ってあげなさい。
木下ひなた
うん。それじゃあ二人ともちょっと待っとってね。話してくるんよ。
最上静香
……
四条貴音
最上静香。貴女もたまには素直に親御さんと話してみなさい。帰って直ぐに、とは申しませんが。
最上静香
……ええ、分かっている……つもりです。父とはキチンと向き合わないと、って。
四条貴音
……さて。お務めも無事終わりましたし、これよりは楽しみの時間ですね。
四条貴音
この北海道には、蟹を始めとした海の幸、それに野菜や畜産物、何よりらぁめんが有りますので。
最上静香
貴音さん、明日は劇場で午前から仕事です。空港まで四時間、寄り道無しで帰るそうですよ。
四条貴音
そんな……プロデューサーはいけずです。後の楽しみを期していたからこそ、頑張りましたのに……
木下ひなた
……ただいまだわ。みんなと話して力を貰ったべさ!……貴音お嬢さん、なんで泣いてるんだべ?
木下ひなた
……そうだねぇ。早く帰らないと暗くなるしねぇ。……北海道が広すぎて、ごめんなんだわ。
(台詞数: 50)