高山紗代子
かくして神様の声が聞こえなくなったわけですが、あれからさらにしばらく経ちました。
高山紗代子
結局、科学者たちの発表は例の「災害の予測と中和」についてでした。
高山紗代子
それはそれはすごい技術ですね。良く分かりませんが、まあ何が起こっているかは分かります。
高山紗代子
これをきっかけに世界の科学者は少し地位が高くなった感じになり、最も人気な職業になりました。
高山紗代子
しかも技術を実現させたあの人達は大半が女子だった事から「リケジョ」なる言葉も生まれたとか。
高山紗代子
さて、そんなことより。これにより私の立場が少し変わりました。
高山紗代子
あの日から神様の言葉は聞こえなくなり、私は人々に伝えることが無くなったからです。
高山紗代子
勿論、その事は言いましたが、恐らく信じてはもらえていません。
高山紗代子
私はそれだけが仕事というか、それしかすることがありませんでしたので、誰でもなくなりました。
高山紗代子
というか、それは人々や私が住んでいるビルの所有者にとってもそうです。
高山紗代子
きっと私は必要ではなくなったから、追い出されたり、まあ避難もうけるであろうと、
高山紗代子
偉い人に直接聞きに行きました。私のこれからについて。
高山紗代子
結果、返答はこんな感じでした。
高山紗代子
今がどうであれ、私が多くの人々を救ったのは事実。それに、科学の母でもある。
高山紗代子
今でも多くの人が私を信じており、追い出すなんてとんでもない。これまで通り居てほしい。
高山紗代子
とまあ、容易に言葉の裏から思惑が見て取れる内容でしたが、私には選択権はありません。
高山紗代子
これまで通り、高い部屋で一人で暮らすことになりました。
高山紗代子
ただ一つ変わったことは、たった一つのやることが無くなってしまったことくらいです。
高山紗代子
思えば、ここに来たあの日から私は大きな力を持った人達の所有物だったのかもしれません。
高山紗代子
そうして、暮らしているある日。世界に異変が起こり始めました。神様のいなくなった世界が、
高山紗代子
少しずつ、綻ぶかの様に変な災害が起きていました。いえ、災害に変も何もないかもしれませんが。
高山紗代子
神様が居た頃のような活力のある災いでは無いというか……主を失った建物が崩れていくような…
高山紗代子
まあ、恐らく私みたいな災害ソムリエにしか分からないでしょうが。
高山紗代子
やはり神様を失っては地球も持たないのでしょう。このまま少しずつ、滅んでいくのでしょうか?
高山紗代子
なんて思いながら過ごしていたある日、二回目の運命の日を迎えました。
高山紗代子
私に面会したいという人がいると伝えられた日の事です。いつぶりでしょうか。
高山紗代子
私に直接、しかも二人きりで合ってほしいとに事だったので、どれほどの偉い人かと待っていると、
四条貴音
「失礼いたします。女神さま」
高山紗代子
部屋に入ってきたのは若い女性でした。ちなみに、私は女神じゃない事を伝える件もやりました。
四条貴音
「私は四条貴音、あなた様に命を救われた数多くの中の一人です」
高山紗代子
と、名乗った彼女の話の、内容は、とても信じ難い物でした。
高山紗代子
科学者たち、きっとあの子たちですが、彼女たちもこの星が危ういことを察知していました。
高山紗代子
そこで、彼女たちが人類を救う為に出した結論は……
四条貴音
「塔を、建てます。塔といってもえれべえたですが」
高山紗代子
建てたら良いじゃないですか。
四条貴音
「これからはろけっとの様な古代の遺産にしがみつくことはありません」
四条貴音
「その塔で宇宙とつながり、新たな答えを探す事こそ、未来を選ぶという事なのです」
高山紗代子
……ロケットが古くてエレベータが新しいなんて、もう科学の世界観は良く分かりません。
高山紗代子
しかし宇宙とは盲点でした。私は見下ろすことしかしてなかったので。
高山紗代子
「それで、何故その話を私に?」
四条貴音
「人には、やはり神が必要なのです。今の予言技術が失敗に終わったのも必然です」
四条貴音
「あなたを科学の母と呼んで言うながら、その母を全く崇めていない」
四条貴音
「ですから、その塔には神が宿る必要があります」
四条貴音
「ああ、勿論研究に加わっていただくわけではありません」
四条貴音
「ただ、この件は人類の恐らく最期の切り札。神の下で行う必要があります」
四条貴音
「ああ、確かにあなた様の言う神は死んだそうですが、その神はあなた様とは違い人の敵でした」
四条貴音
「まあ、元より私はこの世に神は一人しか知りません」
四条貴音
「大丈夫です。神の作る塔が一体誰の怒りにふれましょう」
四条貴音
「あなた様の、これまでの人類への救いが真実であったのなら……」
四条貴音
「私たちの、主に相違ないのではないでしょうか」
(台詞数: 50)