大神環
後半だぞ。
二階堂千鶴
環の「こぶん」が連れていたのは、雑種や三毛、黒、ボイント、毛並みも様々の……
二階堂千鶴
恐らくはその近辺の、最近生まれた子猫達なのでしょう。
二階堂千鶴
連れて歩く様は、ちょっと粋がったチビ達の面倒を見る近所のお兄ちゃん、といった所でしょうか。
大神環
おお!こぶんがあにきぶんに!!
二階堂千鶴
つい先日も、越後屋さんの近所で見かけまして。
大神環
えちごや?あのへんて……。
二階堂千鶴
そうですわね。でかくて不貞不貞しい虎模様の銅鑼猫の縄張りですわ。
二階堂千鶴
案の定、子猫の一匹がおいたをして、銅鑼公不興を買った様子で、忽ち合戦が始まりました。
二階堂千鶴
しかし相手が悪すぎました。怯える子猫達を庇いながらの奮闘虚しく、忽ち劣勢に。
二階堂千鶴
満身創痍で敗走は明らか。命の危険も有りました。
二階堂千鶴
尻尾は丸く縮こまり、四肢は震えて立つのも覚束ない。
二階堂千鶴
それでもこぶんは、銅鑼公に威嚇の声を上げ、子猫達を庇います。
大神環
そ、それでどうなったんだ!?たまきのこぶんは!?
二階堂千鶴
余りのしつこさに、遂には銅鑼公も根負けして去って行きました。
二階堂千鶴
安心なさい。こぶんはちゃんと病院へ連れて行きました。
二階堂千鶴
今では、ウチで呑気に寝転がって、傷を癒しておりますわ。
大神環
ぶじなのか?良かった……。
二階堂千鶴
元気になったら連れて来ますから、思う存分可愛がっておやりなさいな。
大神環
おう!たまき、こぶんの事、いっぱいほめてやるぞ!
二階堂千鶴
そうしておやりな………って、貴音!?何ですそのボロボロの格好は!?
四条貴音
ああ、千鶴、二階堂千鶴、私……私は…………
二階堂千鶴
あああ至る所に引っ掻き傷を拵えて!一体何が………
四条貴音
やりました!私はやり遂げました!!(手に持った紙袋を、ばああーん!)
二階堂千鶴
そ、その紙包みは?
四条貴音
そう、千鶴のお父上の特製ころっけ、遂に今日、事務所の皆に届ける事が叶ったのです!
二階堂千鶴
いや寧ろ、そんな小学生にも容易いお使いが何故今まで出来なかったのかと。
四条貴音
………消えてしまうのです。
二階堂千鶴
………は?
四条貴音
荷を受け取り、二階堂家を出て駅へと向かい、電車で二駅ゆらり揺られてこの街に。
四条貴音
夕暮れの道をいそいそと、軽い空腹感を覚えながら事務所へと向かう私。
四条貴音
気が付けば何と面妖な!いつの間にやら紙袋は空っぽに!!
二階堂千鶴
ちょっと待てーい。
四条貴音
そんなこんなを繰り返すこと十三回、さてそこで私、一計を案じました。
二階堂千鶴
いやせめて二三回目で。
四条貴音
本日は思うところあり、駅よりの道を、此方の通りへと進路修正。
四条貴音
暮れなずむ道の途上にて空腹を覚え、……しかし今日の私、視界に入りし「らぁめん転石軒へ!」
四条貴音
「メンバリカタニンニクアブラマシマシカエダマカエダマカエダマタカナオカワリ」
二階堂千鶴
都合四杯分ですわね。
四条貴音
颯爽と店を出る私の手には、未だ暖かさの残るころっけ53個!
四条貴音
ところがここで登場するのは、悪漢、越後屋の銅鑼猫!我が手のころっけは忽ち標的に!!
四条貴音
なりません!これは二階堂のお父上に託された大事!きしゃー!!
四条貴音
………かくして悪漢は去り、見事ころっけは守られたのです!!
二階堂千鶴
貴音!そんな苦労が!!
四条貴音
私、やりました!二階堂千鶴、どうか私を褒めて下さい!!
二階堂千鶴
ええ、ええ、良くやりましたわね、貴音!私、感動で涙が………って、
大神環
………………。
大神環
「大人とは、大切な何かの為に身を投げうつもの」
大神環
「大人は、茶番劇が好き」
大神環
「そして大人は、バリ堅替え玉四杯分」
(台詞数: 50)