四条貴音
はあ……それで。
豊川風花
それで、私たちが彼女の様子を見に来た時には、もう……
四条貴音
なるほど……それはまた、ゆゆしいことですね。早速あのお方に報告しましょう。
豊川風花
あ、あの……それはもう少し待ってくれませんか。
四条貴音
何故です。早く捻じれを正さなければ、どうなるか分かりません。
松田亜利沙
いやほら、すぐ帰ってくるかもしれませんし!
四条貴音
あなたにも責任がありますよ。いえ、この場にいる三人の連帯責任ですが。
松田亜利沙
ええ!勝手な事をしたのはあの子だけじゃ!
四条貴音
私たちの使命は何ですか?
松田亜利沙
え、えっと。耳の良い風花さんとカメラを持ってるありさで下界を見張ることですね。
四条貴音
何のためにですか?
松田亜利沙
…………下界のアイドルちゃんたちを余すことなく
豊川風花
あの子の本の通りに世界が流れてるか、ですよね。
四条貴音
その通りです。あの子が番をしている本。本来は世界の事象が記録されていますが。
四条貴音
逆に言えば、記録されたことが起こらなければならないのです。
四条貴音
しかし、知っての通り稀に記録と異なった事象が起こることがあります。
松田亜利沙
あ、下界で言う奇跡ってやつのことですね!!
四条貴音
その間違いをあのお方に報告し、修正していただく為に私たちは存在しています。
豊川風花
で、その本の番の子が居なくなってしまったと。それも……
四条貴音
……番のあの子はあろうことか、本に干渉しました。記録を書き換え……
四条貴音
自身を下界の存在として、自ら堕ちたのです。
豊川風花
あの方に逆らうなんて、一体何のために……
松田亜利沙
……実はありさ、あの子の気持ち分かっちゃうかもしれないです。
四条貴音
……うかがいましょう。
松田亜利沙
ありさ、ずっと下を見てると、時々思うんです。有限の中で生きるのって、羨ましいって。
松田亜利沙
下界の人たちって、ありさ達と違って何の使命も無く生まれて来てるんです!
松田亜利沙
それってとってもキラキラしてて、何でもなれるし、何でも出来るんです!
松田亜利沙
無限の可能性にミチミチしてるんですよ!!!
四条貴音
……?
松田亜利沙
あれ、ピンときてない?
四条貴音
理解できません。確かに彼らは私たちの様に使命に縛られてはいないかもしれません。
四条貴音
しかし、その人生の一切があの本に決められている。それは、私たちよりも可能性など無いでしょう
豊川風花
そ、そうよありさちゃん。誰が聞いてるか分からないのにあんまり大胆な事言わない方が……
松田亜利沙
風花さんだって思ってるでしょう!さっきだって貴音さんの事止めてたし!
豊川風花
そ、それは……
四条貴音
風花、絶えず下界を聴いていた貴女は、どう思いますか。
豊川風花
下から聴こえる音は、とても取り取りです。ここよりもずっと。
四条貴音
……そうですか。
豊川風花
私やありさちゃんは、実際に下界にいつも触れています。でも……
松田亜利沙
あの子は、いつも本で見たり、ありさ達から聞いたりしてるだけだったから……
四条貴音
魅入られてしまったのですね。少し、分かった気がしました。
四条貴音
……。
豊川風花
た、貴音さん?
四条貴音
奇跡、ですか。
松田亜利沙
さっきの話ですか?
四条貴音
本に縛られているはずの存在が私たちに影響を与え、あの子に運命を書き換えさせた。
豊川風花
さっきは記録と事象の祖語を間違いだと言ってましたが、もしかすると。
松田亜利沙
奇跡って、それほど異質な物ではないのかもしれませんね。
四条貴音
分かりました。与えられた使命はあれど、私たちは確かに此処に在ります。
四条貴音
友人の行く末を、確かに見届けるとしましょう。
(台詞数: 50)