甘い影【後】
BGM
恋花
脚本家
concentration
投稿日時
2015-01-23 03:33:43

脚本家コメント
2・3回で終わると言ったな?あれはうっそーん、ほえほえー。
しかも途中遊びすぎて、収まりきらずに尻切れ蜻蛉。
EgoーWrappin'「So Blue」1998年
個人的にはラッピンベスト3曲のひとつ。

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木下ひなた
降りしきる雨の中
木下ひなた
外灯の薄明かりの下、立ち尽くす彼女の後ろ姿に
木下ひなた
掛ける声が見つからず
木下ひなた
傘を持つ手は痺れて
木下ひなた
「……………」
四条貴音
「……ひなた、風邪をひきますよ」
木下ひなた
振り向かない彼女の表情は見えず
木下ひなた
「あ、傘……、持ってたんかい?」
木下ひなた
「なして傘差さないのさ。貴音お嬢さんこそ、風邪引いてしまうべ……」
木下ひなた
彼女は緩やかに、優雅に、くるりと振り向いて
四条貴音
「……少し、頭を冷やしておりました」
木下ひなた
弾ける雨粒が、外灯の白い光を反射して
木下ひなた
彼女は、淡い銀光に包まれて、まるで月のお姫様の様。
木下ひなた
けれども月は、雲天に隠れて
木下ひなた
降り止まぬ雨粒は、…………………………………………………………………………………月の涙。
二階堂千鶴
「………ひなた、迎えに出た貴方までぼうっとつっ立って、二人揃って風邪をひきますわよ」
木下ひなた
「……あ、ごめんなぁ、千鶴お嬢さん……」
四条貴音
「二階堂千鶴まで、迎えに来てくださったのですか」
二階堂千鶴
「いいから、早く帰りますわよ。そんなにずぶ濡れで……」
四条貴音
「二階堂千鶴」
二階堂千鶴
「……何です?」
四条貴音
「私、振られてしまいました」
二階堂千鶴
「そうですか」
四条貴音
「……そういう時は、もっとこう、優しく慰めてくれるものではないでしょうか」
二階堂千鶴
「慰めて欲しいのですか?」
四条貴音
「ええ♪」
二階堂千鶴
「それでは、三辺回ってわんとおっしゃいましたら、温かいスープで慰めて差し上げますわ」
木下ひなた
「千鶴お嬢さん、何言って……」
四条貴音
すっと、佇まいを移し
四条貴音
暗い雨の中
四条貴音
暗い雨の中 ふわりと浮いて
四条貴音
暗い雨の中 ふわりと浮いて 外灯のスポットライトの下
四条貴音
緩やかに、ターン。舞姫の、ステップ。
木下ひなた
彼女の頬を伝うのは
木下ひなた
雨の滴か
木下ひなた
月の涙か
二階堂千鶴
「その紙包みは、何かプレゼントを頂きましたの?」
木下ひなた
彼女が手に持っていたそれの可愛らしい包装は、既に雨でよれよれに
四条貴音
「ええ、高価な物ではないと仰ってましたが」
二階堂千鶴
「まだ中を御覧になっていませんの?」
四条貴音
「それが、安物を目の前で広げられるのは惨めだから止めてくれと……」
二階堂千鶴
「全く、甲斐性も無ければ意気地も有りませんのね。開けてご覧なさいな」
四条貴音
そっと包みを解く彼女の手に
四条貴音
銀と白い石の、ペンダント。月と音符を象った銀細工に、淡く白く輝く石。
四条貴音
その手に握られた小さな輝きを、そっと、胸元に
四条貴音
静かに閉じた瞼から
四条貴音
頬を伝うのは
四条貴音
月の涙の、優しい温もり。
四条貴音
雨粒がリズミカルに叩く肩越しに
四条貴音
揺らいで見える、優しい影。

(台詞数: 50)