甘い影【前】
BGM
恋花
脚本家
concentration
投稿日時
2015-01-21 04:21:46

脚本家コメント
EgoーWrappin'「アマイ カゲ」1999年
いつもの話とは関係ありませーん。
でもやっぱり関係あるような無いようなどっちでもいーや。
たぶん2・3話くらいの続きモノ。

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四条貴音
早春の雨は未だ冷たく
四条貴音
くたびれた靴に染み込む、水の感触
四条貴音
背中に伝わる彼女の重みと
四条貴音
微かな寝息と
四条貴音
淡い温もり
四条貴音
傘がずれてはいまいかと気に掛けながら
四条貴音
弱々しく明滅する
四条貴音
外灯の光の下を歩く
四条貴音
「……………………、」
四条貴音
「……何故、私、背負われているのでしょうか……」
四条貴音
「……ああ、私、お酒を誤って……」
四条貴音
未だ朦朧としているらしい、しどろもどろの口調
四条貴音
「……あ、あの、私、先程までの記憶がはっきりとしないのですが……」
四条貴音
「………何か粗相をしたりは……」
四条貴音
顔を赤らめ、困窮した様が目に浮かび、思わず吹き出した。
四条貴音
「な、何故笑うのですか?さては私………」
四条貴音
狼狽える彼女があまりにも可笑しくて、少しからかってやろうかとも思ったが
四条貴音
しがみつく彼女の指の震えを感じて
四条貴音
ほんの口一口の酒で、忽ち倒れてしまった事を教えてやったが、どうにも笑いを堪えきれない。
四条貴音
赤面したまま頬を膨らませた彼女が、いつもの様に抗議して来るかと思ったのだが
四条貴音
予想に反して彼女は
四条貴音
「……自分で歩けますので、降ろして下さい」
四条貴音
弱々しく言った。
四条貴音
そっと降ろして、彼女の傘を渡す。
四条貴音
彼女は受け取った傘を開こうとせず、俯いたまま、タクシーを使わなかったのかと問うて来たが
四条貴音
恥ずかしながら金欠である為、タクシーを途中で降ろして貰った事を白状した。
四条貴音
しかし彼女が雨に濡れない様注意を払ったので勘弁して欲しいと、謝罪すると
四条貴音
「そうではありません」
四条貴音
「貴方がずぶ濡れではありませんか」
四条貴音
苦笑して、この程度では馬鹿は風邪をひかない事を教えてやったが、彼女は収まらず
四条貴音
「貴方は何時もそうです。へらへらと笑ってばかりで、私の問いに真面目に答えて下さいません」
四条貴音
「私が、私の所為で貴方が風邪に倒れるのを、何とも思わないと……」
四条貴音
手に持った傘を開こうともせず
四条貴音
俯いたままの彼女の肩が震えている事に、気付いた。

(台詞数: 34)