高山紗代子
…………
四条貴音
おや、もう弾かないのですか?
高山紗代子
あ、いつからそこに?
四条貴音
日課の夜のおやつを食べながらの散歩をしていたところ、素晴らしい音色が聴こえたもので。
高山紗代子
そう……でも今日はもう良いです。一人で弾いてもつまらないので。
四条貴音
それより今日のおやつは三色団子です。いかがですか?
高山紗代子
……さっきのパーティーであんなに食べてたじゃないですか。
四条貴音
ほら、昔から「空腹より辛いものは無い」と言うでしょう。
高山紗代子
誰でも言えそうなフレーズですね。
四条貴音
万人に通ずる真理ですから……と、今宵は何を悩んでおいでですか?
高山紗代子
……ええ、今日の決断……本当にして良かったものかと。
四条貴音
それはそれは、学者はお嫌いではありませんでしたか?
高山紗代子
嫌いとは言ってません!ただ考えが分からないと言ったたけです。
高山紗代子
自分で産み出しておきながら、必ず後悔してしまうあの人たちが、分からないだけです。
四条貴音
我らが主様は、存外お優しいのですね。
高山紗代子
……よしてください。私は正しい事をしたいだけです。
高山紗代子
私は、これまで自分なりにですが、それなりの正義を積み上げて来たつもりです。
四条貴音
それならほら、随分高く積み上がっているではありませんか。
高山紗代子
……あれは私の物ではありません。
四条貴音
選択したのはあなた様ですよ。いつだって。
高山紗代子
何の代償もなく糧が得られるとは思っていません。得たとしてもそれが正義とは到底思えません。
高山紗代子
でも……今回失うものは、あまりに大きすぎます。
四条貴音
あら、そこは今朝決まった通り「大局を見よ」ですよ。
高山紗代子
……私にとって、ですよ。
高山紗代子
……あの、今回の正義は正義足り得るでしょうか。
高山紗代子
いえ、いつもです。今までの私が選んだものは、何か世にもたらしてくれたでしょうか
四条貴音
……主様、「空腹より辛いものは無い」と申しました。
高山紗代子
ええ、聞きました。
四条貴音
あなた様が正義を振るってから、私は空腹で辛そうにしてる人を見たことがありません。
高山紗代子
…………
四条貴音
それはそうと、あなた様なら……犠牲の代わりを選択する事も出来るのでは?
高山紗代子
……それは、同じことです。誰かが世界の為に泣かなければならないのなら……
四条貴音
違います。世界の方を捨てることも出来るではありませんか。
高山紗代子
……
高山紗代子
それだけは、許されませんね。少なくとも私には。
四条貴音
……望み通りに出来る立場であるのに、尚自らの宝を犠牲にして私たちの世界に尽くす。
四条貴音
その心中を考えると全くおいたわしい……
四条貴音
ですが、そんな我らが主に私たち一同は日々感謝しています。
四条貴音
あの塔は、あなた様の上に建てられて居るのでしょうね。
四条貴音
本当の犠牲はいつもあなた様一人。その胸中は私には想像すら出来ません。
高山紗代子
……私は、多分犠牲から一番遠いんだよ。
四条貴音
詩人ですね。それでは、私はそろそろお夜食の時間ですので……おやすみなさい。
高山紗代子
……何であの人、あんな喋り方しか出来ないんだろう。
高山紗代子
……でも、全部正しい。私はきっと何もできない。今まであの塔にどれだけ払ってきただろうか。
高山紗代子
今さら、途中で投資を止めるなんて恐ろしくて想像も出来ない。
高山紗代子
……私があの子を失うまで後数日。
高山紗代子
私はきっと何もできない。
高山紗代子
どうか……どうか、この世にまだ正義なんて物が残っているのなら。
高山紗代子
下に埋まっている私ごと、出来ればこの世界も一緒に。
高山紗代子
全部全部、壊してください。
(台詞数: 50)