四条貴音
……………という訳なのですが。
二階堂千鶴
……成程、話の大筋は理解致しましたが、
二階堂千鶴
話を整理する必要がありますわ。
二階堂千鶴
先ずはその子、伴田路子さんと仰ったかしら?
二階堂千鶴
貴方のじいやさんのお知り合いの、その娘さんのお子さん……でしたわね。
二階堂千鶴
貴方にとってはほぼ他人、と言っても差し支え有りませんが……。
四条貴音
ええ、……ですがじいやは、私が幼少の頃から世話して下さった、肉親に等しく大切な者です。
四条貴音
そのじいやが大変に心痛めているのです。私に出来る事有らば、力になりたいのです。
四条貴音
ましてやそれが、幼くして両親を喪い、遂には祖父殿にも先立たれ……、
四条貴音
施設では馴染めず、幾度も脱走を繰り返しては、今は誰も居ない生家に帰り、ひ一人佇む……。
四条貴音
実際に彼女に会った時は、とてもいたたまれず……、
二階堂千鶴
……察しますわ。今の話を伺っただけの私も、そんな気持ちですわ。
二階堂千鶴
その子の母親が亡くなられたのは伺いましたが、父親は?
四条貴音
父親は、更にその一年前に亡くなって居られます。
四条貴音
愛する妻と子に、誕生日のぷれぜんととけぇきを買い、帰宅の途上で交通事故に巻き込まれ……。
四条貴音
突然の悲報に母親は耐えられず、その死を受け入れられず……、
四条貴音
遂には心を病み、「夫は生きているが、彼は自分達を捨てて、他の女に奪われた」などという、
四条貴音
痛ましい妄言を作り上げ、閉じ籠ってしまったそうです……。
二階堂千鶴
……自分が不幸であっても、それでも御主人に生きていて欲しかったという事なのでしょうか……。
二階堂千鶴
理解し難いですが……、それは私がまだ子供だからなのでしょうか。
四条貴音
理屈で語れる物では無いのかも知れません……。当人も望んでそう思い込んだ訳では無いでしょう。
四条貴音
終いの頃には、祖父殿すらも近付く事を許さなかったとか……。
四条貴音
遂には我に帰り、後悔の内に自らの命を絶ったと……。
四条貴音
祖父殿の後悔もまた然り、その子を引き取り、それは大切に、愛情を込めて育てられましたが……。
四条貴音
祖父殿も他界し、その子は天涯孤独となってしまったのです。
二階堂千鶴
そんな経緯を聞いては、それは放っておける筈も有りませんが……。
二階堂千鶴
私達、まだ高校生ですわよ?何が出きると仰るのですか。
四条貴音
勿論、私達に出来る事などたかが知れた事でしょう。
四条貴音
しかし、全てを出来ないからと言って何もしない訳にはまいりません。
四条貴音
ただ私達に出来る事を成す事、それが大事ではありませんか?
二階堂千鶴
……仰る通り、ですわ。
四条貴音
それに、千鶴もその子に会えば、その様な理屈など不要になるでしょう。
四条貴音
私など、その子に会ったその時……、
四条貴音
あまりのいとおしさに、思わずぎゅーってしてしまいました。
二階堂千鶴
ぎゅ、牛?
四条貴音
もう不憫で、いとおしくて、ぎゅーって、そう、二階堂千鶴を抱き締める様に、ぎゅー……
二階堂千鶴
……落ち着かんかい。
(台詞数: 37)