ロコ
(独りでいる事に馴れた身には、この場の凄まじい熱気と、それを発する何百人もの、)
ロコ
(如何にも粗野な出で立ちの群れ、その流れに翻弄されながら、)
ロコ
(身を捩り、爪先を伸ばし、何とか壇上を視界に入れられないかと試みた。)
ロコ
(幼少の頃から内向的、自室から一歩外に出るのすら億劫で、放っておけば一日中、)
ロコ
(怪しげな絵や歪な造形を拵えて、一人、悦に入る。そんな私の、)
ロコ
(唯一の、外界との接点。)
四条貴音
(それが、彼女、四条 貴音。)
ロコ
(会場に響く怒声、嬌声は、益々高まり、閉塞の空間は、今にもはち切れそうな圧に満ち溢れる。)
ロコ
不意に始まる、低音弦と打楽器の響き。そして、)
四条貴音
(彼女が、語り始めると、すうっと、空気が、静まり返る。
四条貴音
「来る日も来る日も、怠惰に身を流され、惰眠を貪り、飽食に飽き、色欲に耽り、物欲に溺れる」
四条貴音
「その様は正しく、卑しい蚤や虱の如き、寄生虫の群れ!」
四条貴音
「暴食に於いて何人にも後れを取らぬ私、さしずめ虱の女王といった所でしょうか?」
ロコ
(彼女の挑発的な文言に、群衆は忽ち色めき立ち、場は再び、怒声に包まれる。)
ロコ
(狂騒を後押しするかの様に、激しさを増してゆく、ドラムロール。)
ロコ
(場の異様な熱狂にも顔色一つ変えず、その女性奏者は、力強く、演じつっける。)
四条貴音
(四条貴音の、背を押す様に。)
四条貴音
「寄生の日々を繰り返し、繰り返し、繰り返し、延々と繰り返す、六十億の寄生虫共!」
ロコ
気付けば、いつの間にか怒声は、嗚咽混じりに変わり、やがて)
ロコ
(聖母に跪く、憐れな群衆の悲鳴へと………)
ロコ
(………安寧の、破壊。無秩序の、創造。………それが彼女の、旗印。)
ロコ
(そして、彼女は、ギターを構え、)
四条貴音
ぶ
四条貴音
ぶ ち
四条貴音
ぶ ち 壊
四条貴音
ぶ ち 壊 せ ♪
ロコ
(忽ち、凶悪に歪んだ、凶状の騒音が、狂気の空間を、震わす。)
ロコ
「インディシプリン……。」
ロコ
(偶々口に出した言葉が、その曲の名だと、後で教えられた。)
ロコ
(狂気の月が創造した、無秩序の世界。)
ロコ
(………己の身も魂も、捧げて………。)
(台詞数: 31)