馬場このみ 29歳 プロデューサー16話
BGM
TOWN_RMX
脚本家
nmcA
投稿日時
2017-06-25 13:42:38

脚本家コメント
第2章「うそつきアップルパイ」2話
【ここまでのお話】
 武道館ライブ後、仮眠をとっていたこのみは5年後の765プロに心だけタイムスリップしていた。自らの身体の変化に戸惑うものの、プロデューサーとして活動することを決意する。
 莉緒からひなたが何か悩んでいるらしいという話を聞いたこのみは直近のライブ映像を確認する。しかし、そこに映るひなたは5年前と変わらずの姿で一緒に見ていた亜利沙ともども、変な様子を感じることができなかった。
 このみはひなたと同じ現場に行くことから、直接聞いてみることとした。

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矢吹可奈
「ふ、ふみまへ~ん。わ、私のへいへ……」
馬場このみ
「いいから。ほら、これ飲んで」
矢吹可奈
「ンクッ、ンクッ……ふへ~。ありがとうございます。プロデューサーさん」
馬場このみ
「まったく。間に合ったからいいものの、次からは気を付けてね。ほら、汗も拭いて」
矢吹可奈
「は、はい。……でも、ちっちゃい子に握手をねだられたんだから、しょうがないと思いません?」
馬場このみ
「いや、握手どころか一緒に歌ってあげてたじゃない」
馬場このみ
呆れ声で諌めたものの、エヘヘと笑う可奈ちゃんを強くは責められない。
馬場このみ
可奈ちゃんは子供向け番組のレギュラーを持っている。そのため、小さい子のファンが多い。
馬場このみ
ファンを大事にするのはアイドルとして当然のこと。ましてや、相手が小さい子ならなおさらだ。
秋月律子
「ま、そのあたりを管理するのがプロデューサーの仕事でもあるんですがね」
馬場このみ
「り、律子ちゃん!?いつの間に!?」
矢吹可奈
「す、す、すみません!すぐに準備しますから!」
秋月律子
「ええ、お願いするわ。ひなたもメイク室にいるから合流してちょうだい」
馬場このみ
控室いっぱいに響き渡る返事を残し、可奈ちゃんは走っていった。
馬場このみ
「ごめんね、律子ちゃん。見つからないようにしたつもりだったんだけど」
秋月律子
「しょうがないですよ。でも珍しいですね。私がいる現場なのにわざわざ可奈についてくるなんて」
馬場このみ
「ええ、実はね……」
馬場このみ
私は莉緒ちゃんから聞いたひなたちゃんのことを話す。
馬場このみ
「ライブの映像を見る限りそんな様子はなかったし、亜利沙ちゃんも可奈ちゃんも知らないって」
秋月律子
「なるほど。亜利沙もですか」
馬場このみ
「ええ、莉緒ちゃんの勘違いだと思うんだけど、一応ひなたちゃんに確認しておこうかなってね」
馬場このみ
軽い調子で聞いたものの律子ちゃんの反応は鈍く、口元に手を置いたままピクリとも動かない。
秋月律子
「このみさん、ひなたに直接聞くのはやめてもらってもいいですか?」
馬場このみ
「じゃあ……」
秋月律子
「莉緒さんの言うとおりです。確かにひなたは悩み事を抱えています」
馬場このみ
「それって、どんな……?」
秋月律子
「それは……って、まさか、ひなたの悩みを解決しようなんて考えてないですよね!?」
秋月律子
「確かに私やチーフのアイドルの面倒を見てもいいとは言いましたけど……」
馬場このみ
「ひなたちゃんはミックスナッツの一員だもの。他の子たち以上に他人事にはできないわ」
秋月律子
「言いたいことは分かりますが……ん……ちょっと待って……このみさんなら……むしろ」
馬場このみ
律子ちゃんは腕を組んだままぶつぶつと呟き続ける。私はかたずを飲んでそれを見守った。
秋月律子
「……分かりました。ひなたのこと、お願いしてもいいですか?」
馬場このみ
「もちろんよ!それでひなたちゃんの悩みって……」
秋月律子
「それはこのみさんの目で確かめてください。こっち側に来たこのみさんなら気付けると思います」
秋月律子
「でも、莉緒さんが気付けたのに亜利沙ったら何をやっているのかしら……」
馬場このみ
「こっち側ってスタッフ側ってことよね?なら、亜利沙ちゃんは責められないんじゃ……」
秋月律子
「あの子は高木社長の下で修業中ですから。あとで厳しくするよう言っておかないとですね」
矢吹可奈
「戻~りました♪プロデュサーさん♪聞いてく~ださい♪」
矢吹可奈
「なんと、さっきディレクターさんに新番組のアシスタントにって誘われちゃいました」
馬場このみ
「あら、ホント!やったわね!ちょっと挨拶しにいかないとね」
矢吹可奈
「でも、大人向けの番組にあまり出たことないから不安っていうか……」
秋月律子
「なら、ちょうど良かったわ。可奈は私がしばらく預かるわ。みっちり教え込んであげるわ」
矢吹可奈
「え゛えっ!?」
秋月律子
「可奈のスケジュールをあとで教えてください。こちらからはひなたの分を送りますので」
馬場このみ
「なるほど。助かるわ。正直どうやってスケジュールを回すか悩んでいたのよ」
矢吹可奈
「あ、あの~、話が全然見えないんですが……」
秋月律子
「可奈!目指すは昼帯の視聴率と好感度No.1よ!」
矢吹可奈
「はれぇ!?な、なんでぇ~」
馬場このみ
律子ちゃんと可奈ちゃんの掛け合いを見て、安堵の息を漏らす一方で、私は別のため息を吐いた。
馬場このみ
はたして、私はひなたちゃんの悩みに気付くことができるのだろうか。

(台詞数: 50)