周防桃子
サンタさんなんていない、空飛ぶソリもないし、靴下にプレゼントも入れてくれない
周防桃子
少なくとも、桃子にとってはそうだった、そんなファンタジーは無かった……
周防桃子
クリスマスの桃子は毎年お仕事だったし、お父さん達も顔つなぎとやらで忙しそうだった……
周防桃子
年末の仕事がひと段落して再び会えるのは大体26日か27日……時には年をまたぐ事もあった。
周防桃子
だからクリスマスの夜は仕事先で当時のマネージャーさんからプレゼントを貰うのが恒例行事……
周防桃子
それはそれで嬉しかったけど、どんなにお仕事を頑張っても私の寝床にサンタは現れなかった……
周防桃子
サンタさんの正体はお父さんやお母さん、そんな事はわかっている……
周防桃子
でも、一度くらいは良い子にしていた桃子にサンタさんがご褒美をくれる、そんな夢が見たかった…
周防桃子
転機が来たのは去年のクリスマス、その日は劇場公演の後にささやかなパーティー……
周防桃子
そして夜も遅かったので劇場付属のホテルでお泊りをする事になった……
周防桃子
桃子は何の感慨も無くベッドに入り、そのまま朝を迎える、そう思っていた……
周防桃子
でも、夜中に物音がして目が覚めると……サンタがいたんだ。
周防桃子
劇場で使ったサンタ衣装を着込んで、ワイワイとプレゼントを置こうとするアイドルのサンタ達…
周防桃子
騒ぎ過ぎだよと声をかけるのは簡単だったけど、桃子はあえてそうしなかった……
周防桃子
目が覚めたらサンタさんが枕元にプレゼントを置いてくれる、そんな夢を見たかったから……
周防桃子
次に目が覚めた時、枕元にはプレゼントの包みとサンタさんからの手紙……
周防桃子
枕元に置かれた気配は感じていたし、手紙の筆跡も見慣れた物、こんなの子供騙しにもならない……
周防桃子
……でも、桃子にとってはこれが初めてサンタさんにもらったプレゼント、それで良いんだ。
周防桃子
空飛ぶソリは無いし靴下にプレゼントも入れてくれない、でもサンタさんはいる……
周防桃子
今の桃子ならそう思える……お人好しでおっちょこちょいのお姉ちゃんサンタ達が来てくれたから…
周防桃子
桃子が良い子にしてたら今年も来てくれるかな、そんな小さなファンタジーを胸に……
秋月律子
あら桃子じゃない!探してたのよー!
周防桃子
律子さんの声?でもどこから……真上?
秋月律子
そうよ!空飛ぶソリに乗った律っちゃんサンタのお出ましよー!
周防桃子
そ、ソリが空を飛んでる……プロペラも無いのに空中静止してるなんて……
秋月律子
はーい!少し早いけど桃子にもサンタさんからのプレゼントよー!落とさない様に受け取ってね!
周防桃子
わっ?わわわ……よし、セーフ……
秋月律子
受け取ったわね?それじゃあ私は年少組にプレゼント配ってくるから内緒にしといてねー!
周防桃子
……飛んでっちゃった………
周防桃子
……今年のファンタジーは、想像していたよりも大きいみたい。
(台詞数: 30)