秋月律子
(『……』)
秋月律子
(『……なにムダ遣いしてるんですか!プロデューサー殿!』)
秋月律子
……プロデューサー殿からの誕生日プレゼントを貰った、私の第一声。
秋月律子
……我ながら最っ低。憎からぬ相手に投げかける言葉じゃないわ。
秋月律子
一応弁解させてほしい。冒頭の言葉が出るほど、プロデューサー殿のプレゼントはズレていた……
秋月律子
……
秋月律子
……本当はネタバレしてたサプライズパーティの後片付けの時。……あんまりムードは無い状況。
秋月律子
皆んなからのプレゼントや手紙を見ている時、おもむろにプロデューサー殿が近づいてきた。
秋月律子
……今日一日仕事で一緒だったのに、プロデューサー殿は、包みとか持ってなかったのでは?
秋月律子
『律子。これは俺からのプレゼントだ。受け取ってほしい。』
秋月律子
……そう言うと、彼はジャケットのポケットに手を入れたのだ。
秋月律子
いつもポケットにゴチャゴチャ物を入れてるんだから。私は、やめてと言ってるのに。
秋月律子
……
秋月律子
……そう、彼のプレゼントは、ポケットに入るサイズの物。小さな小箱に入った……
秋月律子
……
秋月律子
だいたい、なんで私に『コレ』が必要だと、プロデューサー殿は考えたの?
秋月律子
これだけ長く一緒に活動してきて、お互いの考え方やフィーリングは通じあってるつもりなのに。
秋月律子
……この小さなリングが必要と思われる程、私は信頼されていないのだろうか。
秋月律子
即物的なアイテムが無ければ、彼の期待を裏切る、上手く行かなくなると、疑われてる?
秋月律子
……光る指輪を弄びながら、私は不満げな顔をしていたのだろうか。彼がフォローしてきた。
秋月律子
『アイドルの仕事中は、いつも俺がピッタリ隣にいられないだろ?』
秋月律子
『律子は、ここ一番でプレッシャーにやられたり、責任感が空回りすることがあるからな。』
秋月律子
『……俺がすぐ隣で支えられない時、その指輪が、律子に力を与えてくれる筈、だろ?』
秋月律子
……
秋月律子
……なんて短慮な。そりゃ、プロデューサー殿の贈り物を着けていれば、勇気や力を貰えますけど、
秋月律子
レコーディングやナレーションの仕事ならまだしも。アイドルが人前で指輪を嵌めていられますか?
秋月律子
アイドルが、ファンやクライアントにどういう目で見られてるのか、考えてなかったのかしら。
秋月律子
業界では、やり手で知られてるそうですけど?そういう抜けてるところも多いんだから。
秋月律子
……ま、そういう彼だから、パートナーとしてやって行きたいんですけどね。まったくもう。
秋月律子
……あ、別に『パートナー』って表現に、深い意味は無いですよ。単なる言葉の綾ですから!
秋月律子
……
秋月律子
誕生日の翌日も、ステージは待ってるわけで。今日も私は出演準備中。
秋月律子
……余談ながら、私のステージ衣装には、腰に隠しポケットを設けてもらってある。
秋月律子
進行役に必要なカンペとか、メガネ拭きとか、ステージ上で咄嗟に要る物を入れておくため。
秋月律子
……今日からは、プロデューサー殿のプレゼントも、ここに入れて出演することにした。
秋月律子
……楽屋で無くしちゃ嫌だし。置いておくと、常に持ち歩いてるのが他の子に知られそうで困るし。
秋月律子
……もうすぐ公演が始まる。そろそろ、左手の指輪を外さないと。
秋月律子
そう思い、右手を伸ばす……
秋月律子
そう思い、右手を伸ばす……左手の、『小指」に。
秋月律子
……
秋月律子
……なんで、ピンキーリングなのよ。
秋月律子
19歳の誕生日にシルバーのリングを云々とか……緑色のムーンストーンは貴重だとか……
秋月律子
おまじないとか気にしてるだろうとか……律子はロマンチストだからこういうの好きだろうとか……
秋月律子
はいはい!プロデューサー殿は的確に私のことを理解してますよ!
秋月律子
……それなのにどうして、指輪は指輪でも、こんなズレた物をチョイスしたのかしら?
秋月律子
……女の子が指輪を贈られる意味、分かってないんだから。人のことロマンチストって言うくせに。
秋月律子
まあ、そんな彼だから……私がいないと駄目よね。フフッ。
(台詞数: 47)