秋月律子
「……しかし、いくら千鶴さん達が昔この店で演奏した事が有るとはいえ……、」
秋月律子
「まさか、あの子達をステージに立たせて貰えるとは思わなかったわ。」
百瀬莉緒
「へー、このお店、そんなに凄い所なの?」
秋月律子
「……莉緒さんはグラビア出身だから知らないか。」
秋月律子
「この『トムズ・ダイナー』ってお店、一見普通のカフェみたいだけど……、」
秋月律子
「そのステージには、国内外の知る人ぞ知るアーティスト達が幾度も招かれた、超有名店なのよ!」
秋月律子
「演奏技術を認められた新人の登竜門、なんて言われてるわ。」
豊川風花
「じゃあ律子さんもここで演奏した事が?」
秋月律子
「いや、私のやってたバンド、メタル寄りだったから……。」
百瀬莉緒
「……意外な過去!」
秋月律子
「それに私達は千鶴さん達と違って、趣味の延長程度の、普通のバンドだったから。」
豊川風花
「千鶴ちゃんと貴音ちゃんはその頃、プロを目指してたのかしら?」
秋月律子
「さあ……。」
百瀬莉緒
「何よ、結構付き合い多かったって言ってたじゃない。」
秋月律子
「うーん、何かハッキリしなかったのよねー。」
秋月律子
「色んなプロダクションから誘われてたみたいなのに……、」
秋月律子
「ステージに上がる度に乱闘騒ぎばっか起こしてたから。とてもやる気が有るとは……。」
豊川風花
「乱闘!?二人とも良いとこのお嬢様かと思ってたのに……。」
百瀬莉緒
「え、お嬢様なんじゃないの?だって、四条と二階堂って……」
百瀬莉緒
【……………。】
百瀬莉緒
【フム、あの三人が、二階堂の嬢ちゃんの、今の同僚と云う訳か。】
秋月律子
【……あの子は確か、嬢ちゃん達の昔の音楽仲間だったか……。】
秋月律子
【こんな時間帯にお揃いで同僚の仕事見物とは……。】
秋月律子
【聞いた通り、高木の事務所は大繁盛とは言えない様子だ。】
秋月律子
【………?おや、オーナーが御来店だ。】
秋月律子
【相変わらずの変装、目深帽にトレンチコート。こんな時間なのに似合わぬサングラス。】
秋月律子
【却って周囲の目を引いているのが、分からないのだろうか。】
秋月律子
【まあ、どんなに怪しまれても顔さえ曝さなければ良い訳だから、間違いでは無いのだが。】
秋月律子
【彼が店に来るのは、決まってこの時間だ。】
秋月律子
【この店の、昼の澄ました様な小洒落たカフェの顔に、彼は関心を示さない。】
秋月律子
【全く、オーナーがそれでは従業員に示しがつかないのだが……、所詮は金持ちの道楽だ。】
秋月律子
【まあ、かく言う私も、同じ穴の貉であるのだが。】
秋月律子
【夕刻の営業の切り替えの慌ただしさ。従業員達の喧騒。】
秋月律子
【昼はしかめっ面で包丁を振るうシェフが、ニヤけた顔で鼻歌混じりで……】
秋月律子
【調味料を並べながら、こっそりとジンを嘗める。】
秋月律子
【勿論私もオーナーも、気付かない振りをしているのだが。】
秋月律子
【普通ならとんでもない話だが、この店は、これでいい。】
豊川風花
……………。
豊川風花
「凄い、夜営業に切り替わったばかりなのに、もう満席ですよ。」
百瀬莉緒
「繁盛してて羨ましいわねー。いっつもこんなに混んでるの?」
秋月律子
「いや、そんなしょっちゅう来てる訳じゃないけど、こんなになるのは大物が来てる時くらいよ?」
豊川風花
「千鶴ちゃんと貴音ちゃんが演奏に参加するって、噂で流したらしいけど……、。
百瀬莉緒
「その影響で?……ちょっと、こんな大勢の前で、ジュリアったらちゃんと出来るのかしら?」
秋月律子
「そうねぇ、あの子結構気遣い屋だから……、雰囲気に呑まれちゃいそうね。」
豊川風花
「大丈夫ですよ、あの子達なら!……あ、ほら、出てきましたよ!」
豊川風花
【……………。】
豊川風花
【リハではそこそこには、こなしていたが……、】
豊川風花
【あの程度では、多少甘く見たところで、この店の客達は納得しない。】
豊川風花
【本番でどこまで出来るか……、嬢ちゃん達の可愛い教え子がどこまでやれるか、】
豊川風花
【実に楽しみじゃあないか。】
(台詞数: 50)