秋月律子
ちょっとプロデューサー、なんで触ろうとしてくるんですか!
秋月律子
下手なことしたら、訴えられるんですよ!いい大人がそんなことも分からないんですか。
秋月律子
……自分と律子の間柄だから、つい、なんて……そんな考え通りません!
秋月律子
競技用に場内で管理されてるとはいえ、正規の手続きを踏まずに猟銃に触ったら法律違反ですよ。
秋月律子
もう。数年前、芸能界の先輩がテレビ番組内で同じようなことをしでかしたのに……
秋月律子
アイドルに制されるプロデューサーが、どこの世界にいるんですか。しっかりしてください。
秋月律子
……ええ。研修と手続きに数ヶ月と数万円を掛けて、やっと今日クレー射撃ができたんです。
秋月律子
とりあえず、「元が取れる」くらいには通いつめますよ。掛けたコストは回収しないと!
秋月律子
……でも、なかなか快感ですよ。飛んでいくクレーが粉々にするのは。
秋月律子
もちろん、何発も外してますけどね……散弾は一発いくらだったかしら、もったいない。
秋月律子
え?律子がそんな金のかかる競技をするなんて意外だ、ですか。……確かにそうかも。
秋月律子
プロデューサー、クレー射撃のルールってご存知ですか?
秋月律子
種目ごとに細かい違いは有りますけど、一発または二発で的を撃たないといけないんです。
秋月律子
で、他の射撃競技は的の中央にどれだけ近いかで点数が変わるんですが……
秋月律子
クレー射撃は、弾がかすりさえすれば1点。まったく当たらなければ0点。
秋月律子
0と1なんて、図らずもデジタルな世界ですよね。面白いと思いませんか?
秋月律子
で、的の数はどの競技者にも同じ。もちろん「芸術点」みたいな加算は無いんです。
秋月律子
つまり……自分の失敗が取り返せないスポーツなんです。上位の誰かが落ちなければ、逆転は無い。
秋月律子
……
秋月律子
……そういう厳しい状況に向き合って、アイドルとしての集中力を高めるのか、ですか?
秋月律子
ふふっ、普通はそう考えますよね。でも、私がやりたかった理由は違うんです。
秋月律子
確かに現実社会では、成功か失敗かの両極端だったり、ミスを取り返せないことは多いです。
秋月律子
だけど、アイドルはそういう両極の世界から乖離したものを提供してると思いませんか?
秋月律子
歌で勝てなくても、グラビアやドラマ出演で戦える子がいる……
秋月律子
賞レースで入賞できなくても、全国放送でインパクトを残せれば、ある意味勝ち。
秋月律子
なにより、ファンを現実から夢の世界に誘うことこそ、アイドルの「力」なんです。
秋月律子
そのことを再確認したくて……ストレス発散を兼ねて挑戦してみたんです。
秋月律子
ま、こうやって理屈をこねくり回さないと、私は新しいことに取り組めないんですよ。
秋月律子
そろそろ帰りましょうか。重たい銃を抱えたのと、射撃の反動で、実は体がヘロヘロなんです。
秋月律子
と、その前に窓口で今日の清算をしなくちゃ。
秋月律子
……うわ、想定以上の出費ね。調子に乗って撃ち過ぎたみたい。
秋月律子
……これって何とか経費で落とせないですかね……他のスポーツを選ぶべきだったかしら。
(台詞数: 32)