秋月律子
……やっぱりプロデューサー、旅費清算がやってない。小鳥さんも領収書の分け方が変だし……
佐竹美奈子
お待たせしました!佐竹厨房です!……じゃなかった。
秋月律子
おはよう美奈子。確かにその挨拶は変ね。
佐竹美奈子
あはは……岡持ち持ってると、ついいつもの癖で。
秋月律子
まだ午前中だけど、誰か出前頼んだの?悪いわねぇ、所属アイドルをこんな風に使って。
佐竹美奈子
あ、そうじゃないです。オムライス弁当の試作品を持ってきたんです。
秋月律子
プロデューサーと作ったメニューね。なかなか売上好調よ。下準備する美奈子の頑張りのおかげよ。
佐竹美奈子
そう言ってもらえると、遣り甲斐があります。でも新作も、かなり良いですよ。
佐竹美奈子
まずは!夏のトマトの酸味と美味しさを前面に出した、フレッシュトマトソースのオムライス!
佐竹美奈子
二つ目は!スイーツを思わせるくらい甘々な、ドミグラスソース濃厚オムライス!
佐竹美奈子
最後は!私の原点回帰。カニ玉を乗せた、天津飯!実はお店に出してるのより、いい食材なんです。
秋月律子
なるほど。爽やかヘルシー系・こってり系・新路線の3つのメニューで訴求するわけね。
佐竹美奈子
?メニューは『1つ』ですよ。
秋月律子
ああ、そうね。試食を通して一番売れそうなものを採用するのね。
佐竹美奈子
そうじゃなくて。セットメニューなんです。3種類のオムライスを一度に食べられて……
佐竹美奈子
さらに!お店で使ってるのと同じ『岡持ち』まで付けちゃうんです!劇場限定グッズです!
秋月律子
……美奈子。ちょっと話してもいいかしら?
佐竹美奈子
な、何ですか?
秋月律子
一体どこの世界に、一度に三皿オムライスを食べたい人が居るのよ!セットじゃ売れないわ。
秋月律子
3つ料理を出すには、それだけ仕入れる食材の種類が要るの。予算も貯蔵スペースも無いわ。
秋月律子
下準備する、美奈子、自分の負担も考えてるの?
秋月律子
そもそも、新メニューを出すと、先行する同系統の商品の売上は下がるの。絶対の勝算が無いと駄目
秋月律子
極め付けは岡持ちよ。ロゴ入りで作って余ったら、下取りにも出せないのよ。
秋月律子
まがいなりにも劇場運営に関わる以上、賛成できる要素は無いわ。
佐竹美奈子
律子さん……そこまで言われると、私ちょっと悲しいです。
佐竹美奈子
小さい頃から、お店を見てて、感じてるんです。料理はお客さんからお金をもらうためだけじゃなく
佐竹美奈子
外食する嬉しい気持ちや、美味しいものを食べる喜びを与えるためもあるんです。
佐竹美奈子
アイドル活動や劇場運営だって、利益のためだけじゃなくて、『喜び』を分け合うため……
佐竹美奈子
私、人のために尽くすのが、本当に好きなんです。それを大事にアイドルをやりたい。
佐竹美奈子
……すみません。経営とかのこともわからずに、生意気なことを言っちゃって……
秋月律子
いいえ、美奈子。言い過ぎたのは私の方よ。つい『数字』を追ってばかりいると……
秋月律子
『数字』だけが、唯一の価値基準だと勘違いしてしまう。お金のことだけを見てしまうわ。
秋月律子
むしろ美奈子、アンタのそういう純粋な気持ちを聴けて良かった。企画そのままではダメだけど、
秋月律子
お客さんも美奈子も、ハッピーになれるメニュー、考えてみましょ!
佐竹美奈子
本当ですか?う~!わっほ~い!それじゃあ早速、プロデューサーも呼んできますね!
秋月律子
あ、そうそう美奈子。そのプロデューサーのことよ。
秋月律子
プロデューサーにガンガン食べさせる、『理想(の体型に仕立てる)主義』は、やめなさい!
佐竹美奈子
えー!だって私、尽くすのが好きだし。プロデューサーさん、本当に美味しく食べてくれるし……
秋月律子
プロデューサーに『もしものこと』を起きさせかねないのよ。アンタの作る量は。
(台詞数: 39)