Birthday of fortune
BGM
たしかな足跡
脚本家
赤津紀一
投稿日時
2017-07-19 00:00:05

脚本家コメント
can you foutune celeblate?
1年後。
51:「ウォッホン!今日から新しいプロデューサーが入社することになったぞ」
52:「おはようございます~、あっ……」
53:「おはようございます。三浦、あずささん……今日からよろしくお願いします」
54:「うふふっ……♪ こちらこそ。おかえりなさい。プロデューサーさん」

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三浦あずさ
焼けつく日差し。ゆらゆらと揺れる光輝く砂浜。私はいま、南国のビーチに来ている。
三浦あずさ
今日は小さいけれど、新人アイドルが一同に介し、歌や踊りを披露する地方アイドルフェスの日。
三浦あずさ
まだ駆け出しの私にとって、とっても大事な勝負の一日だ。だというのに――
三浦あずさ
「うぅ……イベント会場は、どこ~?」
三浦あずさ
私は広大な砂漠のような真夏の砂浜で、一人、迷子になっていた。
三浦あずさ
「ふぅう、暑い……早く会場へ、戻らないと……」
三浦あずさ
根っからの方向音痴である私は、大事なお仕事のため、今日はいつもより早く現地へ着いていた。
三浦あずさ
だが開場のかなり前に着いたせいか、イベントが行われる場所にはまだ設営の影も形もなく。
三浦あずさ
猛烈な太陽の光が振り注ぐ熱い砂浜に、じっと待っていることは不可能だった。
三浦あずさ
休める日陰を探し、ひたすら海沿いに移動してしまった。そのせいで、迷ったのだ。
三浦あずさ
(ウチの社長、人を見る目はあるけれど、仕事を取ってくる才能は全然無いんじゃないかしら)
三浦あずさ
プロデューサー不足のウチでは、まだほとんどの移動や予定の管理などをアイドル自身がしている。
三浦あずさ
(それにしても、こうした移動の手配とか時間管理とかが苦手な私に限って、どうして遠方に……)
三浦あずさ
愚痴の一つも言いたくなる。自分なりに頑張ってるけれど、何一つ上手く出来ず、希望が見えない。
三浦あずさ
(私、素敵な――運命の人に出会うためにアイドル目指したのに。そんな余裕どこにも――)
三浦あずさ
「ひゃっ、あっ!? ああ~~っ!」
三浦あずさ
などと余計なことを考えていたら、いつの間にか海岸の端の崖側の所まで来ていたらしい。
三浦あずさ
危ない! と驚いた拍子に薄手のスカートへ入れておいたスマホが海中へと転がり落ちていた。
三浦あずさ
「あぁもう、どうして私、せっかくの自分の誕生日に、こんな……もう……」
三浦あずさ
私はそこでついに気力を失くし、その場にへたりこんでしまった。
三浦あずさ
やっぱり私みたいなどんくさい女がアイドルなんて……胸に悲しみが込み上げてくる、その時。
三浦あずさ
「あっ、いた! あずさ……さん? あずさ、さん、ですよね?」
三浦あずさ
「あ、あなたは?」
三浦あずさ
あぁ自分、イベント運営の手伝いの者です。と名乗る一人の男の人がそこにいた。
三浦あずさ
「まったく。人が一人消えてんのに誰も探しやしない。どうなってんだ、芸能界って所は」
三浦あずさ
どうやらこの人は、私のことをわざわざ探しに来てくれたらしい。それもたぶん、自主的に。
三浦あずさ
「さあ、戻りましょう。帰り道、知ってるんで。あの……よければ、どうぞ」
三浦あずさ
そう言うと、座り込む私にそっと手を差し伸べてくれた。その動作は少し恥ずかしそうだった。
三浦あずさ
「ええ、はい……」
三浦あずさ
手を取る私も何だか恥ずかしかった。どれくらいぶりだろう、男性としっかり手をつなぐのは。
三浦あずさ
それから彼と二人で、ほどなく私はフェス会場へ戻ってきた。別れ際、ゆっくりと手を離す。
三浦あずさ
「あ、あの~~その~~、う、運営さん? えっ、と……その、すみません。えへへ……」
三浦あずさ
どぎまぎしちゃって。もう顔がきっと真っ赤っかで。感謝の言葉が、出てこない。
三浦あずさ
「私、私その……こんなにスタッフの方に親切にして頂いたの、初めてで、嬉しくって、その」
三浦あずさ
「ああ、いえ。自分も、こんな風に手つなぎでエスコートしたの、初めてで。緊張して……」
三浦あずさ
同じ気持ちだったんだ。お互いに照れながら、会釈して、笑い合う。心の繋がりを…感じる。
三浦あずさ
私の胸の鼓動は、いつの間にか押し寄せる波音のように高まっていた。それを引き裂くように。
三浦あずさ
「おい! お前、どこのアイドルだ! 今までどこ行ってた! のこのこ遅れて現れやがって!」
三浦あずさ
怒鳴り声が響く。他のアイドルのステージが行われている、その裏側で。
三浦あずさ
「遅れてすみません! ですが、彼女も歌わせてあげてください……!」
三浦あずさ
「はぁ? 何だお前は。お前はこいつの何者だ?」
三浦あずさ
「あ、えっと、お、オレは――」
三浦あずさ
「プ、プロデューサーさん! です。わ……私の」 口が、勝手に喋っていた。
三浦あずさ
「プロデューサー? お前が?」
三浦あずさ
「……はい。遅れてすみません。ですがウチのあずさに今一度チャンスを下さい。お願いします!」
三浦あずさ
「~~チッ。まぁ、一人出ずに失踪したとかざわつくよりマシか……ただし、一曲だけだからな!」
三浦あずさ
「「ありがとうございます!」」二人で深々と頭を下げる。とっさに作った、二人だけの秘密。
三浦あずさ
その後、たった1曲だけのライブ。私は……この機会を繋いでくれた彼のために歌い、成功を収めた
三浦あずさ
私はこの日、誓った。今日、彼とは離れ離れになってしまうけれど、今日の彼みたいな人がいつか
三浦あずさ
有名になった私を見て「あの時の…」と迎えに来てくれるような、そんなアイドルに成ろう、と……

(台詞数: 50)