三浦あずさ
社長、お疲れ様です。どうでした、撮影に参加なさった気分は?
高木社長
ああ三浦君、お疲れ様。いや緊張したよ、キミ達アイドルの苦労が少しだけ分かった気がするな。
高木社長
しかしいくらモデルが急用で欠席とはいえ、もう少しましな代役は用意出来なかったのかね。
三浦あずさ
あら、立派なお父さんでしたよ?思わず「今までお世話になりました」って言いそうになるぐらい。
高木社長
おやおや。キミにそういうお相手がいるのは承知してるが、もう少しウチの娘でいてくれないかな?
三浦あずさ
あらあら。うふふ、我儘な父を持つと娘は苦労させられますね。
高木社長
ははは。それじゃ、帰るから着替えてきたまえ。場所は分かるかな?
三浦あずさ
はい、大丈夫です。それじゃ…あら?
黒井社長
どうも、お邪魔しているよ。
三浦あずさ
黒井社長…何のご用ですか?
黒井社長
レディの部屋に無断で入った不躾はお詫びしよう。だが、ちょっと見て欲しい写真があってね。
三浦あずさ
はあ。えっと、一体どういう…なっ、これは!?
黒井社長
ククク。気を付けたまえ三浦あずさちゃん、壁に耳あり障子に目ありと言うだろう?
黒井社長
いけないねえ、プライベートとはいえアイドルがこんな事しちゃ。これがばれたら大問題だ。
三浦あずさ
…こういうお話はプロデューサーさんとなさって下さい。外に社長もいますし。
黒井社長
おやおや。自分がしでかした事なのに後始末は他人に丸投げすると?
三浦あずさ
はい。私が勝手な事して余計な事になるよりその方がいいはずですから。
黒井社長
ふん、開き直りか。あの四流プロデューサーをよほど信頼していると見える。
黒井社長
だがね、考えてみたまえ。この件には少なからず苦労させられるはずだ、高木も、あの男も。
黒井社長
それから…キミの仲間のアイドル達や、大切に想っているこの男性もね。
三浦あずさ
…
黒井社長
それがほんの少し、私の言う通りにするだけで全て解決する…悪い話ではないだろう?
三浦あずさ
…何をしろと?
黒井社長
ククク。そう怯える事はない。なあに、ほんの少し我慢すればいいだけだ。
黒井社長
では始めようか。まずその衣装を…ああ、更衣室を使え。雰囲気は大事にしなくてはな。
黒井社長
…素晴らしい。やはり私の目に狂いは無かったな。最高だよ?
三浦あずさ
…そうですか、どうも。これで満足ですか?
黒井社長
ああ、充分だ…そんなに睨まなくてもいいだろう?心配しなくとも約束は守る、安心しろ。
黒井社長
だが…せっかくだ、この美しい姿をもっと多くの人間に見てもらいたいと思わないかね?
三浦あずさ
や、止めて下さい。それは、それだけは!
高木社長
三浦君?随分遅いが何かあったのかね。
三浦あずさ
社長!?ダメです、来ないで!
黒井社長
来たな。入りたまえ高木、鍵は開いているぞ。
高木社長
その声は黒井か、お前がどうして…なっ、こ、これは…
三浦あずさ
み、見ないでください社長…
黒井社長
フハハ!どうだ高木。その目にとくと焼き付けるがいい、一世一代の晴れ姿だぞ!
高木社長
黒井…お前、一体三浦君に何をして…
黒井社長
どうだ。素晴らしい花嫁だろう、美しいと思わないかね?
高木社長
いや、その…
高木社長
何故お前が三浦君の花嫁衣装を着ているのだ?
黒井社長
前から思っていたのだ。日本人にウエディングドレスは似合わない。
黒井社長
日本人の婚礼に相応しいのはやはりこうした伝統的な花嫁装束だとな!
高木社長
それが今お前が花嫁姿でいる事と、何の関係があるんだ?
黒井社長
花嫁装束は女が着る、凡百の考え方だ。王者の道は男女の観念を逆転した所に開かれるのだ!
高木社長
…黒井は帰したよ。三浦君、その。すまなかったね?
三浦あずさ
お気づかいなく。あのう、今回の事は内緒にしておいた方がいいんですよね?
高木社長
頼む。アイツも疲れてるのかな、昔はああじゃなかったのだが。それじゃ、お疲れ様。
三浦あずさ
びっくりしたわねえ。それにしてもわざわざその為にあんな。女装用に作って貰えば良かったのに…
黒井社長
(男が女装の為の衣装では意味が無い。女性が着るための物だから価値があるのだよ。)
三浦あずさ
って言ってたけど。そういう物なのかしら?分かりたくはないこだわりよねえ~。
(台詞数: 50)