三浦あずさ
「あなた……」
三浦あずさ
愛する人を呼び、その手を握ります。大きくて、ごつごつして、まだ温かい手を。
三浦あずさ
あなたは、やさしく微笑んだまま、私の手を握り返します。
三浦あずさ
あなたの命の灯火は、もうすぐ消えてしまいます。私を1人、置き去りにして。
三浦あずさ
「安心してください。私もすぐに行きますから…。」
三浦あずさ
あなたを失ったまま、一人で生きていく意味はありません。
三浦あずさ
…………
三浦あずさ
私は、ずっとずっと昔から、旅をしてきました。
三浦あずさ
何度も何度も生を受け、何度も何度も生涯を終え
三浦あずさ
けれど、決して記憶は失わず、また姿もほとんど変わりませんでした。
三浦あずさ
それが何故なのかは、ずっとわかりませんでした。
三浦あずさ
…………
三浦あずさ
『あずさ………』
三浦あずさ
あなたが私の手を握る力が、弱くなっていきます。
三浦あずさ
そして、声にならない声で
三浦あずさ
『ありがとう。
三浦あずさ
『ありがとう。愛しているよ。』
三浦あずさ
そう呟き、あなたは瞳を閉じました。
三浦あずさ
………
三浦あずさ
私は、ずっと道に迷ってきました。
三浦あずさ
何年も、何十年も、何百年も。もっともっと、ずっと昔から。
三浦あずさ
時には何のあても無く
三浦あずさ
時には占いに頼りながら
三浦あずさ
迷って迷って、迷い続けて
三浦あずさ
そしてようやく巡り会えた、私の運命の人。
三浦あずさ
あなたと離れる事など、考えられるはずがありませんでした。
三浦あずさ
………
三浦あずさ
目を閉じて、あなたに耳を近づけます。
三浦あずさ
もう、あなたから命の鼓動を感じる事はできません。
三浦あずさ
まだ温もりの残るあなたの手を、固く握りしめます。ぎゅっと、ぎゅっと。
三浦あずさ
二度と離れる事が無いように。指と指を絡ませます。
三浦あずさ
今まで私は、記憶を失わないまま、生まれ変わりを繰り返してきました。
三浦あずさ
何があっても、何度死んでも………『私』に完全な死は訪れませんでした。
三浦あずさ
でも、今なら……
三浦あずさ
今なら、この薬を飲み干せば、二度と覚めることの無い眠りにつけるはずです。
三浦あずさ
私が永い旅を続けてきた理由。それはきっと
三浦あずさ
きっと、あなたの隣に居るために。 私は、この日の為に、永い旅をしてきたのでしょう。
三浦あずさ
…………
三浦あずさ
「今、行きます。あなた……」
三浦あずさ
私は、薬を飲み干しました。
三浦あずさ
しばらくすると、強い眠気が私を包んできました。
三浦あずさ
薄れ行く意識の中、最後まであなたと手を繋ぎ続けます。
三浦あずさ
「ずっと、この手を離さないでください。私が、二度と迷子にならないように。」
三浦あずさ
「あなた……愛しています。」
三浦あずさ
私は、深い眠りに落ち……
三浦あずさ
そして、二度と目覚める事はありませんでした。
(台詞数: 46)