三浦あずさ
「うふふ、あはは~♪プロデューサーさぁん、もう一軒行きましょ~もう一軒~♪」
三浦あずさ
やや足がよろめくほどに泥酔した彼女の肩を抱きながら俺は、返事をせずに苦笑いを返した。
三浦あずさ
「ね!ひどくないですか?抜けがけしないって約束したのにぃ~、友美のバカっ」
三浦あずさ
今日は二人ともオフの日だったが、昼すぎ頃、彼女から突如呼び出しがかかった。
三浦あずさ
聞くと、友達の結婚式に一緒に出てほしいという。しかもフィアンセとして。
三浦あずさ
友人に見栄を張りたいのか、なぜか式場で俺たちは恋人同士を演じることになった。のだが……
三浦あずさ
そこで、なんと俺たちは愛し合うことを証明するため、キスをすることになり、口づけを交わした。
三浦あずさ
軽く、しかし……
三浦あずさ
軽く、しかし……甘い口づけ、だった。
三浦あずさ
そして式が終わったあと、「ヤケ酒を飲みたい」という彼女の要望に応え、今に至る。
三浦あずさ
「一緒に、一緒に運命の人を見つけてお互い仲良くゴールインしようねって言ってたのに……うぅ」
三浦あずさ
頬を桜色に染め、くにゃくにゃのゆでダコのようになっていた彼女が少し気持ち悪そうに俯いた。
三浦あずさ
俺は肩越しに彼女の顔を覗き込んで、大丈夫ですか、と言った。大丈夫じゃないです、と怒られた。
三浦あずさ
「私、その……初めてだったんですよ、キス」
三浦あずさ
呟くように告げられたその事実が、俺の胸を柔らかくしめつける。
三浦あずさ
「――ということは、私たちはもう立派な夫婦ですね。あなた」
三浦あずさ
気を紛らすためか、少しふざけた調子で言ってきた。なので自分も、そうだね、あずさ。と返す。
三浦あずさ
「えっ、あっ……私のこと“あずさ”って……」
三浦あずさ
同じ調子で返されると思ってなかったのか、彼女は素に戻って、なぜか嬉しそうに恥ずかしがった。
三浦あずさ
そして、互いを思いあう一時の沈黙が訪れる。
三浦あずさ
…………
三浦あずさ
…………
三浦あずさ
ふと、夜の駅にかがやく時計を見ると――
三浦あずさ
ふと、夜の駅にかがやく時計を見ると――十二時がすぎる。
三浦あずさ
ふと、夜の駅にかがやく時計を見ると――十二時がすぎる。今日は彼女の誕生日だ。
三浦あずさ
「ねえ、あなた。それなら……今日は私を目いっぱい、ご奉仕してくれますか?」
三浦あずさ
相変わらず、人に誤解されるような言い回しをするな、と思いながら自分は答えを返した。
三浦あずさ
ええ、目いっぱい、お誕生日お祝いいたしますよ。と。
三浦あずさ
ええ、目いっぱい、お誕生日お祝いいたしますよ。と。すると彼女はむくれながら、
三浦あずさ
「そんなのでは物足りないですー。もっとすごいことして……」
三浦あずさ
「じゃなかった、すごい、えーとカッコいいこと言って欲しかったです。もうっ」
三浦あずさ
と少し残念そうに笑った。俺は少しだけ本当の気持ちを込めて、やや意地悪にこう告げた。
三浦あずさ
じゃあ、あずさの方が先にお手本を見せてくれよ。気持ちのこもった“一言”ってやつをさ。
三浦あずさ
「…………」
三浦あずさ
「…………これって、演技、ですよね」
三浦あずさ
「……プロデューサーさん、
三浦あずさ
「……プロデューサーさん、愛して……
三浦あずさ
「……プロデューサーさん、愛して……います……」
三浦あずさ
その言葉に、
三浦あずさ
その言葉に、見惚れた。
三浦あずさ
その言葉に、見惚れた。しかし同時に思い出した。俺は、プロデューサーなのだ。
三浦あずさ
その時、終電の到着をつげるアナウンスが駅から響いてくる。俺は名残惜しそうに言った。
三浦あずさ
今日は帰りますね。それじゃあまた……
三浦あずさ
今日は帰りますね。それじゃあまた……「だめです」
三浦あずさ
今日は帰りますね。それじゃあまた……「だめです」笑顔で立ちはだかる彼女の姿がそこにあった。
三浦あずさ
「お願いです。帰らないで……
三浦あずさ
「お願いです。帰らないで……今日はもう少し……
三浦あずさ
「お願いです。帰らないで……今日はもう少し……私と二人で、朝まで……ね?」
三浦あずさ
俺は返事の代わりに、彼女をもう一度優しく抱き寄せて、深く甘い誠意の約束を交わした。
三浦あずさ
夏のあたたかく熱っぽい風に身も心も投げ出して、二人は夜の街へと消えていく。
(台詞数: 50)