七尾百合子
数え切れない星たちと、永久を歩く天体。
七尾百合子
その中のどこかにある星明かりの図書館。私はそこで司書をしています。
七尾百合子
私は本が好きです。ですが生憎、ここに普通の本は置いていません。
七尾百合子
並ぶ本は全て、他者の生涯を記しています。
七尾百合子
地上の生命は一生を終えた後、この場所へと還ってくるのです。
七尾百合子
そして栞を挟んで書架で眠ります。またいずれ訪れる一生が来るまで。
七尾百合子
やがて眠った魂は星となって暗い地上を照らします。
七尾百合子
今、在り続ける命たちを尊ぶように。
七尾百合子
廻り廻る悠久の流動に一緒に、ゆっくりゆっくり廻るのです。
双海亜美
「こんちは〜神さま!」
双海真美
「こんちは〜ゆーり!」
七尾百合子
唐突に聞こえた声の主はよーく知っています。
七尾百合子
幾億の迷い星よりも一等強い光を放つ、双の魂。
七尾百合子
ここを訪れれば何かしら騒ぎを起こす。……言わば問題児。
七尾百合子
と、私は認識しています。
七尾百合子
「あの、何度も言ってるけど――」
七尾百合子
「私はここを管理してるだけで、神さまじゃないからね?」
七尾百合子
「それと、ゆーりって何? 名前なんて言ったっけ私? そもそもどこから湧いてきたの?」
七尾百合子
「あと図書館では静かに」
双海真美
「うあうあ〜、そんな一遍に覚えられないし、答えられないよー!」
七尾百合子
「まったく……。それで? 今日は何しに来たの?」
双海亜美
「ゆーりと遊びたいな〜って思って」
七尾百合子
「嫌です」
双海真美
「即答!?」
七尾百合子
「だって、この前も散々だったんだから。折角並べた本の順番がバラバラになってるし」
七尾百合子
「ほら見て、この本なんか表紙に落書きが!」
双海真美
「それは冤罪だよ〜」
七尾百合子
「あなた達以外ここに来ないでしょう?」
双海亜美
「ゆーり、ひょっとして友達……いないの?」
七尾百合子
「ぎくっ」
双海亜美
「じ、冗談だ、よ……?」
七尾百合子
「……」
双海亜美
「ジト目恐いよ!? でも大丈夫。ゆーりの心配も、もうすぐナッシングだかんね〜」
七尾百合子
「もうすぐ?」
双海真美
「んっふっふ〜、遂に決まったのさ!」
双海亜美
「ねー!」
七尾百合子
「ふふ、そっか」
七尾百合子
「あなた達は二人で、一冊の本になるんだね?」
双海真美
「そだよー! だから、もうゆーりの安全は捕囚されたよ〜」
七尾百合子
「捕囚じゃダメだよ。でも……そっか」
七尾百合子
「……良かった。本当に」
七尾百合子
――――――
七尾百合子
『今度はどんな光と出会うんだろう?』
七尾百合子
『今度はどのくらいの灯と話せるのかな?』
七尾百合子
これからに胸を膨らませて、楽しそうに輝いていた双の星。
七尾百合子
あれからどれくらい経ったかな。
七尾百合子
私は今、あなた達の本を読んでいます。
七尾百合子
ふふ、刻まれていく文字が喜びを詠っているよ。
七尾百合子
あなた達がずっと仲良しでいられますように。
七尾百合子
私はいつだって、夜空の上で祈っています。
(台詞数: 50)