北上麗花
……皆様、大変お疲れ様でした。今回の旅のメインの目的地、『分億神社』に到着いましました。
北上麗花
この分億神社は、通称『アッサリ神社』と呼ばれております。その理由は……
北上麗花
ここに参詣し御守りを持つと、病気・認知症や様々な障害・家族との軋轢などに苦しむことなく……
北上麗花
……ある日突然お迎えが来て、アッサリ旅立てるから、と言われているからです。
北上麗花
……長い山道の移動、お疲れ様でした。滞在時間は一時間です。お手洗いは駐車場横にございます。
百瀬莉緒
……あーっ、本当に大変だわ。ずっと崖の道で景色も良くないし、ガタボコ道だから寝られないし。
百瀬莉緒
アッサリ逝けるなんてご利益が無いなら、正直こんな辺鄙な場所には来たくないわね。
北上麗花
お客さん、驚かれましたか?凄くバスが停まってて。
百瀬莉緒
あ、ガイドさんもお疲れ様ね。ブームって凄いわよね。
北上麗花
こんな田舎のボロ神社が、上手い商売してますよね。
百瀬莉緒
……そんなぶっちゃけた事、貴女の立場で言ってもいいのかしら?
北上麗花
休憩はしっかり摂る派なので。今の私は、ただの20歳の女の子なんです。
北上麗花
……それと、この神社のご利益が本物なのは知ってますよ。あ、フランクフルト半分食べますか?
百瀬莉緒
話が唐突に飛ぶわね……。お客さんが、その、アッサリ亡くなった例も知ってるわけ?
北上麗花
まあそんなところです。
北上麗花
まあそんなところです。……年金生活者が多い中で、お客さんみたいな若い人は珍しいですね。
百瀬莉緒
まあ、最近いろいろ思うことが有ってね。
百瀬莉緒
……例えば、最高の彼氏と結ばれたとしても、その人に看取られて旅立てるとは限らないじゃない。
百瀬莉緒
先を越されちゃうかもだし、意識無くしたり記憶がボロボロになって苦しむことになるかもだし。
百瀬莉緒
……だったら、そんなこと無く人生のフィナーレを迎えたいなって。
百瀬莉緒
もし若いうちにアッサリ終末を迎えても……美しいまま散るバラみたいで、それもいいわ。
北上麗花
分かります!他人にオシメ替えられる生活なんて、想像したくないですよね!
百瀬莉緒
……本当に休憩中は、遠慮の無い言い方なのね。ある意味凄いプロ意識だわ。
百瀬莉緒
そういえば、ガイドさんやドライバーさんは参拝しないの?ずっとバスで休憩?
北上麗花
はい、社内の申し渡しで、そう決まってるので。
百瀬莉緒
何度も来てるから、参拝済みとか飽きたから、とかじゃないの?わざわざ会社がそんな命令を?
北上麗花
……じつはちょっと前までは、したい人は参拝してたんですが……
双海亜美
(よーし、参拝完了休憩終了!帰り道も慎重にいくから、ヨロヨロ〜!)
北上麗花
……ある日、参拝からの帰路、参拝したドライバーが運転するバスが、
北上麗花
……谷底に転落して。乗客乗員全員、死亡するという事故がありまして……
百瀬莉緒
……この神社の『ご利益』は、確かに本物ってわけね。
(台詞数: 31)