雪月華『まるで花が咲くように』
BGM
永遠の花
脚本家
concentration
投稿日時
2017-04-08 02:32:59

脚本家コメント
企画ドラマ、『雪月華』、これが最後の一輪となります。長く間を空けてしまった事、力作を上げて下さった皆様と待っていて下さった皆様に、深くお詫び申し上げます。ひとえに私の判断の甘さが故、誠に申し訳ありません。

さておき昨年の春より始まったリレードラマ企画、漸く区切りまで漕ぎ着ける事が出来ました。皆様の熱意とご厚意に、深く感謝を。

また新しい企画が出来れば、幸いです。

お気付きの方も多いと思いますが、副題はTV放映の21話から引用させて頂きました。

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天海春香
明け方近くまで空を覆っていた雲は、いずこかへ。うって変わって抜ける様な青空の朝。
天海春香
道端の名残り雪だけが、童話めいた昨夜の不思議な出来事が、現実だったよ、と囁く。
天海春香
でもそれは、やがては溶けて消え、おぼろげな記憶になって
天海春香
【ピュウッ】 「寒っ!」
菊地真
「やっぱり風が有ると寒いねー」
萩原雪歩
「でも陽射しがあったかいよね。いきなり春になったみたい」
天海春香
そんな他愛ない会話を交わす日常に埋もれて、忘れられて行くのかもしれない。
天海春香
「でも本当に、昨日はみんな集まれて良かったよね!」
菊地真
「皆の話が本当だったら、奇跡のオンパレードがなし得た、究極奇跡のパーティーだったね」
天海春香
「ま、まあ正直、そんな都合良く奇跡の大バーゲンが起こるものかとは、ちょっと思うけど…」
萩原雪歩
「そうかなぁ?」
菊地真
「どういう事?」
萩原雪歩
「私ね、奇跡っていうのは『偶然起こる』んじゃなくて、『遂に起こる』物だって、思うんだ」
萩原雪歩
「例えば、街を歩いてたらたまたまお茶の試飲会を見付けた、っていうのは、ただの偶然」
萩原雪歩
「でも、一生懸命穴を掘って、不発弾を堀り当てたっていうのが、奇跡」
天海春香
「いや、不発弾堀り当てたら、アンラッキーだよ?」
菊地真
「ま、まあ、喩えはともかく、言いたい事は分かるかな……」
菊地真
「要するに、奇跡が起こるってのは、チャレンジしてこそって事だよね」
菊地真
「何度失敗しても挫けず、挑み続けた先に、奇跡が待ってる」
菊地真
「奇跡の確率が百万分の一ならば、百万回挑めば良いんだ」
萩原雪歩
(同じ事を言っても、真ちゃんが言うとカッコ良さがシャレにならないですぅ!)
萩原雪歩
(正にカッコ良さのサンタクロースですぅ!プレゼントフォーミーユアスマイル!)
天海春香
「雪歩なにか言った?」
萩原雪歩
「ううん、気のせいだよ。春香ちゃんもそろそろ、難聴のお年頃かな?」
天海春香
「まだ17歳なんですが」
菊地真
「ねえ、二人とも覚えてるかな?まだボク達が全然売れてなかった頃、皆で海に行ったの」
萩原雪歩
「うう、伊織ちゃんの怖い話、思い出しちゃった……」
菊地真
「『一年後には、トップアイドルになれてるかな?』なんて話をしてたけど」
菊地真
「まあ大それた事を夢見てたもんだと、つくづく思うよ」
萩原雪歩
「でも、諦めないで挑戦して……」
天海春香
「何度つまずいても、立ち上がって、また挑んで……」
天海春香
【ツルッ】「って、わわっと!」 【ドンガラガッシャン】
萩原雪歩
「は、春香ちゃん、大丈夫?」
菊地真
「あーあ、生垣に突っ込んじゃって。まだ雪が残ってるんだから気を付けなよ」
天海春香
「てへへ、お約束ですから」
菊地真
「なーに言ってんのさ。ほら、手貸して……」
菊地真
「あ」
萩原雪歩
「あ……」
天海春香
「?」
天海春香
二人の視線の先、私の倒れ込んだ生垣の地面を見ると
天海春香
雪の合間に、一輪の、タンポポの蕾。
菊地真
「はは、急に暖かくなったから、慌てて咲かせようとしちゃったのかな?」
萩原雪歩
「咲く………かな?」
菊地真
「奇跡まで辿り着ければ、もしかして………」
天海春香
「うん、きっと、辿り着くよ………」
天海春香
何となく、三人で、小さな蕾に手を振って
天海春香
私たちは再び、事務所への道を歩き出した。
天海春香
冷たい風の中を、はしゃぎながら
天海春香
奇蹟みたいに暖かな陽射しの下を、歩き出した。

(台詞数: 49)