我那覇響
朝、起きると朝食が用意してあって
我那覇響
『今日はお魚、頑張ってね♪行ってきます』
我那覇響
書き置きとお弁当が置いてある。
我那覇響
少し遅めの朝食を食べてから、竿とバケツを持って出掛ける。
我那覇響
最近釣れてないから…前に釣れたときに干したのも昨日でなくなったし…
我那覇響
『よし!今日こそは頑張ってたくさん釣るぞ』
我那覇響
自分を奮い立たせるようにいい放ってみるも…
我那覇響
バケツの中は弁当箱と同じ…せめて木の実位は取って帰るか…
我那覇響
家に付いたら夕飯の用意だ。ご飯を炊いて野菜を切って…
我那覇響
『魚が釣れてればなぁ…』
我那覇響
質素だけど二人で食べる分にはこれで大丈夫だ。贅沢は言えない
我那覇響
そして彼女の帰りを待つ。
我那覇響
…ただひたすら待つ
我那覇響
自分にはそれしか出来ないのだから…
我那覇響
彼女には苦労をかけている。まだ結婚はしていないがもう女房みたいなもんだ…と思っている。
我那覇響
…どうやら自分は記憶喪失らしい。
我那覇響
気が付いたら何も思い出せない。ただ女性が心配そうな顔で自分を覗き込んでいた
我那覇響
ケガも負っていたらしく全身包帯だらけ…全く動けない自分の看病をその女性は献身的にしてくれた
我那覇響
聞けばその女性は、自分とはその…結婚を前提としたお付き合いをしていたらしく…
我那覇響
そんな大切なこと事も忘れてしまっていた自分を責めることもなく…
我那覇響
献身的に…看病してくれたんだ。
我那覇響
彼女を好きになるのにそう時間はかからなかった。元々好き同士なんだ、当然と言えば当然だ
我那覇響
『ケガが治ったら結婚しよう』
我那覇響
そう言うと彼女は涙を流して喜んだ。自分も嬉しかった…彼女の知ってる自分とは違うかも知れない
我那覇響
でも、今の自分が彼女を好きなのには変わりない…記憶があろうと無かろうと、答えは一緒なのだ
我那覇響
問題はないはずだ
我那覇響
大分体のケガも良くなってきたし、自分も町に出て働くと申し出た。結婚にはお金が必要だろ?
我那覇響
そしたらまだ無理をするなって…『お金の事は私に任せて、体を治すことが先だ』って…
我那覇響
そんなヒモみたいな事はいつまでも出来ないって言ったんだけど、彼女は言うんだ…
我那覇響
『あなたはまだケガをしてるの。だからこのまま…このままでいて!』
我那覇響
必死な顔で…言われた。そのあと泣くのを堪えてたみたいだったけど…
我那覇響
やっぱり記憶の戻らない自分では役不足と言うことなんだろうか…少し自分に嫉妬した。
我那覇響
でも彼女は自分を求めてきた。自分も応じた。だって当然だろ?自分と彼女は結婚を前提とした仲だ
我那覇響
でも自分は…満足出来なかった…何故だろう…もっと激しくして欲しい?なんだこれ?
我那覇響
自分…変態さんだったのかな?思いきって彼女に聞いてみたら
我那覇響
『そうだったよね…』
我那覇響
寂しそうな顔で言われた。それっきり求められることは無くなった。
我那覇響
(ごそごそ)…どうやら帰ってきたらしい
我那覇響
『お帰りなさい、
我那覇響
『お帰りなさい、のり子♪』
我那覇響
彼女の知ってる自分が戻れば…彼女は笑顔を取り戻すのだろうか…
我那覇響
自分の最初の記憶。気が付いたときに見た…のり子の笑顔が、彼女の心からの笑顔のはず…
我那覇響
そうしたら今の自分はどうなってしまうのか…
我那覇響
『ごめん!今日もボウズだったんだ(汗)その代わり木の実たくさん取ってきたから食べようね』
我那覇響
彼女を幸せにするには…どうすれば良いのか…答えはひとつだ。今の自分が消えればいい
我那覇響
それは分かってるんだ。
我那覇響
でも何かが…何かが記憶が戻るのを邪魔しているんだ…
我那覇響
『美味しいか?じゃあまた取ってくるぞ♪でも魚が食べたい?うう…それは言わない約束だぞ』
我那覇響
今の自分を肯定している自分…記憶を取り戻すと消えてしまうから…?それだけではないような…?
我那覇響
『ううう…頭が!?なんだこのイメージ、ハム…スター?うわあぁぁぁ!?』
(台詞数: 50)