春日未来が気に入らない
BGM
TOWN_RMX
脚本家
ハルラン
投稿日時
2017-08-15 23:05:11

脚本家コメント
春日未来の話であって春日未来の話じゃない。そんなお話。

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春日未来
いけ好かないツラ。春日未来への第一印象はそんなものだった
春日未来
初めて会ったのはドラマのオーディション。台本を読み、集中を高めてる時にあの子はやってきた
春日未来
「緊張しちゃいますよねー!私ドキドキが止まらないんです!あ、わたし春日未来っていいます!」
春日未来
「…………ごめんなさい、今は話しかけないでくれる?」
春日未来
とびきりの笑顔で話しかけてきた彼女の顔を見たとき、私は無性にイライラした
春日未来
アイドルとして成功する人は一握り。少ないチャンスをものにできる人だけが頂点に登りつめられる
春日未来
だからこそ頂点を目指す以上、現れたチャンスは必ず掴み取らないといけない
春日未来
そんな大事な場でヘラヘラしていられるその神経が気に食わなかったし、関わりたくないと思った
春日未来
でもそんな気持ちとは裏腹に、その後の仕事でもまるで狙ったかのように春日未来と一緒になった
春日未来
私が停滞しているわけではない。あのオーデションには落ちたけど、それでも実力はついていってる
春日未来
過酷なレッスンで確実に成長していたし、実際に仕事の量は増え、規模だって大きくなっている
春日未来
なのに
春日未来
「あ、ーーーさん!!こんにちは!!」
春日未来
収録で
春日未来
「今日のお仕事、私すっごく楽しみだったんですよ〜〜!でへへ」
春日未来
イベントで
春日未来
あの子は、いた
春日未来
あの笑顔を見るたび、私の中を疑問と怒りが湧き上がっていった
春日未来
私は他の人とは違う。血の滲むような努力をして、苦しさを噛み殺して、必死になって努力している
春日未来
そんな私とあの子がなんで同じステージに立てるの
春日未来
私とあなたは違う。努力してるはずの私とあんな能天気な人が同じレベルなはずがない
春日未来
どうして。どうして。どうして。どうして。
春日未来
それからも私とあの子との因縁は続いていき、遂にはULAのファイナルリーグにまで行き着いた
春日未来
Ultimate Live Arena. 全てのアイドルが憧れる伝説のステージ
春日未来
星の数いるアイドル達を捩じ伏せ、予選を勝ち抜いた者達だけが立てる場所に、私達も立っていた
春日未来
不愉快さはあったが、それ以上に春日未来というアイドルを完全否定するのにいい機会だと思った
春日未来
出番が先なのは私たちのユニット。できる準備を全てして、万全な状態でステージに立つ
春日未来
出来は完璧。頭に叩き込んだ振り付けは寸分の狂いもなく出せて、歌も練習通りキレイに歌えた
春日未来
次は春日未来の番。でも以前にライブ映像を見た限りでは突出した長所は何も見られなかった
春日未来
歌もダンスも私が上。負ける要素は何一つない。勝ちを確信しながらも視線をステージに向ける
春日未来
イントロが流れる暗闇の中、静かに立つあの子。明転と同時に歌声をあげた
春日未来
世界が変わった。そう思ってしまうほどの熱気と声援が会場を一気に包んだ
春日未来
私たちのステージで聞いた歓声とは明らかに違う。声量、熱量。全てにおいて私達の上をいっている
春日未来
動揺を漏らしつつステージを注視する。けど技術は確かに向上してるが特別際立ったものはない
春日未来
ならなんで……?さらに注意深くステージを見た時、あることに気づいた
春日未来
春日未来はいつもの笑顔を見せていた。よく見せようとか上手くやろうみたいな混じり気を感じない
春日未来
いや思ってるのかもしれないけれど、それ以上にこの瞬間を楽しもうという気持ちの方が強い
春日未来
本当にライブが好きで、ファンが好きで、アイドルが好きなんだと伝わった
春日未来
そして気づいた。その思いがファンに響いて共鳴し、高まりあい、この瞬間を作り出していることに
春日未来
その様はまるで、あの日憧れ、キッカケをくれたアイドルのようだった
春日未来
いつからだろうか。レッスンを辛いとしか思わなくなったのは。仕事に結果しか求めなくなったのは
春日未来
楽しむことを忘れ、作り笑顔を貼り付けて、心を擦り減らしてステージに立ったのはいつからだろう
春日未来
気づけば私は、憧れからいちばん遠い所に立っていた
春日未来
歌声が止み、目一杯の歓声が響き渡る。この日一番の拍手をうけて春日未来のステージは終わった
春日未来
昂った心を持て余しているのだろう、肩で息をしながらも軽い足取りでステージを降りてくる
春日未来
「あ、あの……春日さん!」
春日未来
早く言わないといけない気がして、すぐに駆け寄って話しかけた
春日未来
「あなたのライブ……あの…その……とっても、すごかった」
春日未来
そう言うとあの子は少し驚いた表情を見せたけれど
春日未来
少しするといつものように、また笑った

(台詞数: 50)