最上静香
『GO MY WAY!! GO 前へ!! 頑張ってゆきましょう』
最上静香
『一番大好きな 私になりたい』
最上静香
曲がスタートすると同時に、私の中に浮かんだイメージ。
最上静香
それは、この曲を一緒に歌うはずだった、未来の姿。
最上静香
まだ未来がアイドルになりたての頃で、歌も振り付けもぜんぜんできてなくて。
最上静香
私もまだまだだったけど、未来にあれこれ教えたり、手本を見せてみたり。
春日未来
『できた…!静香ちゃん、私、できてたよね…!?』
最上静香
ひとつ山を越えるたびに見せる、未来の輝くような笑顔…!
最上静香
私は、夢への道は険しいもので、そこに辿り着くには試練と障害の連続だと思っていた。
最上静香
でも、そんな私の思いとは正反対に、未来は無邪気に、そして一途に、夢に一直線で。
最上静香
能天気だと思った。そんな未来を、羨んだり嫉妬したりしたこともあった。
最上静香
でもそれ以上に、未来のその姿勢は、私にとってまぶしくて。
最上静香
いつしか、未来の姿は、私にとって憧れの一つとなっていた。
最上静香
あんな風になれたらいいなって、思ったのよ…。
最上静香
初心に返った私は、あの頃の気持ちを思い出して、ただ一生懸命に、歌い、踊る。
最上静香
横に立った未来の影が、私を励まし支えてくれるから、何も不安は無くて。それ以上に楽しくて。
春日未来
『笑顔だけは負けないよ!』
最上静香
…そうね。その通りよね、未来!
最上静香
私も、この一曲だけは!
最上静香
心は初心でも、今まで鍛え続けてきた体と技術はそのままに。
最上静香
この『GO MY WAY!!』は、新人でも歌えるくらいで、難易度は高くない曲だけど…。
最上静香
それでも、歌う人次第で、無限に広がりを見せてくれる!
最上静香
『この世界中で One & Only でも Not Lonely!』
最上静香
歌詞がどんどん心に染みてきて。これは、本当に良い歌ね…。
最上静香
何一つ特別なものを足さず、ただのびのびと。この歌はそれで十分だったし、完成していた。
最上静香
…ありがとう、未来。
最上静香
最後に、一番大好きな仲間に、心の中でお礼を言って。
最上静香
私は、歌を終えた。
高木社長
「…うむ!素晴らしかった!本当に、驚かされたよ!」
最上静香
満面の笑顔の社長は、興奮を隠そうともしないで、私に惜しみない拍手をくれた。
最上静香
審査員席に一礼して、私はステージを後にする。
最上静香
後は、結果を待つだけ。
最上静香
手ごたえは…あったと思う。
最上静香
気持ちが走りすぎて疲れた体を引きずりながら、控室に向かう。
最上静香
その途中で、まるで待ち構えていたようにやってきたのは…やっぱり未来だった。
春日未来
「静香ちゃん、お疲れ様!予選、どうだった?」
最上静香
人によってはデリケートな話題を屈託なく振ってくる未来に、思わず笑みがこぼれる。
最上静香
「結果はわからないけど、しっかりできてたと思うわ。私の…『GO MY WAY!!』。」
最上静香
それを聞いて、未来の目が驚きで丸くなった。
春日未来
「えっ、ウソ!?『GO MY WAY!!』歌ったの!?」
春日未来
「いつか一緒に歌おうって思ってたのに!静香ちゃん、ひどい!ひ~ど~い!」
最上静香
たちまちむくれて、地団駄すら踏みそうな未来に、私はくすっと笑って。
最上静香
「…私は、未来と一緒に歌ったわよ?」
最上静香
そう言うと、たちまち困り顔になってしまった未来が可笑しくて、笑いをこらえるのに苦労した。
春日未来
「…あれ?静香ちゃんと、歌った…?えっ…?私が覚えてないだけ…?」
最上静香
記憶力に自信が無いのか、未来が無数にはてなマークを浮かべた表情をしている。
最上静香
そんな大事なこと、私も未来も、忘れるわけないじゃない。
最上静香
「そうよ。二人で歌ったんだから。」
最上静香
そうやって、未来とじゃれ合いながら、私は。
最上静香
『あの人』が教えてくれたものが、私の中でしっかりと根を張り始めたのを感じていた。
(台詞数: 50)