春日未来
「んっ…」
春日未来
目をゆっくり開けると、そこは見慣れた私の部屋ではなくて…
春日未来
真っ白な天井が私の視界に入る。
七尾百合子
「おはようございます、未来ちゃん」
春日未来
「百合子ちゃんだ~、おはよーって…あれっ?」
七尾百合子
「ここは病院ですよ、未来ちゃん」
春日未来
「え!?私、確か可奈とおでかけしてて…それで…」
七尾百合子
「それは昨日の出来事です」
七尾百合子
「未来ちゃんは熱中症で倒れたんですよ」
春日未来
「そうなの!?」
春日未来
「可奈は大丈夫なの?」
七尾百合子
「はい、ピンピンしていますよ」
春日未来
「可奈、無事でいてくれてありがとう」
七尾百合子
「可奈ちゃんは別に倒れていませんから…」
春日未来
「でも、可奈には嫌な思いさせちゃったかなって…」
春日未来
「ちゃんと、謝らないと!」
七尾百合子
「まだ目覚めたばかりなのに、急に起き上がっちゃダメですよ」
七尾百合子
「安静にしないと…」
春日未来
「えへへ、ごめんなさい…」
春日未来
コロン…
春日未来
病室の床に、何かが落ちる音がして、私の注意はそこに向かう。
春日未来
「ビー玉…?」
春日未来
私が首を傾げると、百合子ちゃんはそれに近づいて丁寧に拾い上げる。
春日未来
それから、私の掌を優しく開くと、ぎゅっと握らせてくれる。
七尾百合子
「未来ちゃん、これは貴方の物です」
春日未来
「わ、私の…?」
春日未来
「あっ、もしかしてこれって昨日のビー玉!?」
七尾百合子
「はい」
春日未来
ビー玉を病室の窓に射す月夜の光に向けて、あててみる。
春日未来
逆さまになったビー玉越しの世界、そこには何も映らない。
春日未来
「あの、これって誰が届けてくれたの?」
七尾百合子
「未来ちゃんにとって、とっても大切な人が届けてくれました」
春日未来
「私の…大切な人?」
春日未来
(ん~、やっぱり一緒にいた可奈のことかな?)
春日未来
大切な人を思い出そうと、霞がかかったビー玉越しの世界をじっと覗きこむ。
七尾百合子
「未来ちゃん…泣いてるんですか?」
春日未来
「うん…ううっ」
七尾百合子
「どうして?」
春日未来
「映ってる…ううっ」
春日未来
「私の知らない、夏休み最後の日々が、ここに映ってるんだもん…」
春日未来
「きっとこれは、私のモノ」
七尾百合子
「未来ちゃん…」
春日未来
「これは夢なんかじゃなくて、本物の思い出だって思うんだ」
春日未来
「だって、あの頃の夏を覗いているみたいに、胸がきゅっとしまるんだもん…」
春日未来
「大切な人って…私自身の事なんだね」
春日未来
「たくさんの想い出をありがとう、もう一人の私」
春日未来
「ちょっぴし不思議で、切ないけれど、最高の想い出ができたよ」
春日未来
「私のもとへ戻ってきてくれて嬉しいな…えへへ」
春日未来
「ビー玉、大切にするね」
春日未来
「私達の夏休み、終わっちゃった…」
(台詞数: 50)