春日未来
「意味がわかんないよ!」
七尾百合子
「ごめんなさい、分かりづらかったでしょうか?」
春日未来
「私は春日未来だよ!」
七尾百合子
「そうですね、確かに貴方は春日未来です」
七尾百合子
「でも貴方は、春日未来だけれど春日未来じゃない」
七尾百合子
「だって貴方は春日未来の一部にしか過ぎないんですから」
七尾百合子
「春日未来の想いが、貴方を生み落としてしまったんです」
七尾百合子
「彼女の一部を犠牲にして」
春日未来
「その"未来"が私ってこと?」
七尾百合子
「はい」
七尾百合子
「この夏がずっと続けばいいのになぁ」
七尾百合子
「どうしてこの言葉だけ、情景だけをはっきりと思い出せたと思いますか?」
七尾百合子
「どうしてその言葉が貴方をここに導いたと思いますか?」
春日未来
「……」
七尾百合子
「それは此処がすべての、貴方のはじまりだからです」
春日未来
「私の…はじまり?」
七尾百合子
「はい、これで、思い出せませんか?」
春日未来
百合子ちゃんは『夏霞』と記された一冊の本を私に差し出す。
春日未来
「これは…」
春日未来
そこには、私の過ごした、たくさんの同じ、8月31日の出来事が事細かに記されていた。
春日未来
それを読まずとも私の過ごした全ての8月31日の記憶が、走馬燈の様に頭の中を駆け巡っている。
春日未来
「そっか…そうなんだ…」
春日未来
「全部、ホンモノだったんだ…」
春日未来
「本物の夏の想い出だったんだ…」
七尾百合子
「はじまりがあるということは終わりもあるんです」
春日未来
「その終わりは…何になるんですか?」
七尾百合子
「それは…帰るべき場所に帰ることです」
七尾百合子
「春日未来のもとへ帰りなさい」
七尾百合子
「その時、貴方は晴れて本当の春日未来になるかもしれないけれど」
七尾百合子
「それは貴方じゃない、春日未来が元に戻るだけ」
七尾百合子
「春日未来の止まっている時間が、いつも通りの、当たり前の時間が…」
七尾百合子
「当たり前のように動き始めるだけなんですから…」
春日未来
「それじゃあ私はどうなるの!?」
春日未来
「私が、みんな過ごした時間は、この夏はどうなるの!?」
七尾百合子
「全てなかったことになります」
七尾百合子
「それでもいいじゃないですか、きっと、未来ちゃんが素敵な明日を…」
七尾百合子
「日々を繋いで、この一夏よりも、もっといい思い出を紡いでくれますよ」
春日未来
「そんなの嫌だ!」
春日未来
「この思い出は私だけのもの…」
春日未来
「私は私だもん!」
七尾百合子
「それで、本当にその選択で後悔しないんですか?」
春日未来
「どういう…こと?」
七尾百合子
「貴方の過ごしている日々は…終わらない一夏は、全てまやかしです」
七尾百合子
「つまり、貴方の存在自体、まやかしなんです」
七尾百合子
「それでもいいんですか?」
春日未来
「それは…」
七尾百合子
「迷っているんですか?」
七尾百合子
「それでは、私から提案です」
七尾百合子
「春日未来に会ってみませんか?」
(台詞数: 49)