夏霞24:未来
BGM
夕風のメロディー
脚本家
ちゃん@春の日
投稿日時
2016-08-25 20:36:39

脚本家コメント
リレードラマ夏霞、最終章、もうちょい続きます
Next→coming soon
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春日未来
私は、あの場所へ辿りつくまでに、色々な所に寄り道をした。
春日未来
不思議な事に、誰に会うこともなくて、まるで世界中に私一人だけみたい。
春日未来
私が寄り道した場所は絵日記には書いてないけれど、確かに行ったことがあるような場所。
春日未来
でも、どれもが朧げで、曖昧で、しっくり来るものはなかった。
春日未来
一番心にきたことは、よく通っていた駄菓子屋さんがなくなっていたことだった。
春日未来
そこにはかつてあった光景は見る影もなく、アスファルト塗装だけが眼に焼きついて…
春日未来
気付くと私は、ビー玉の様な涙の雫を一滴、そのアスファルトの上に落としていた。
春日未来
照り返しのせいか、そのビー玉模様の雫は一瞬で、しゅわっと消えてしまう。
春日未来
「そっか、私の辿り着くべき場所は…ここじゃないよね」
春日未来
両の拳をぎゅっと握って、悟ったように、私は足早にその場を去った。
春日未来
あの丘に辿り着くころには、辺りはすっかり夕焼け色に染まっていて…
春日未来
「あ、ラムネ」
春日未来
昨日、座った憶えのあるベンチには、ラムネの瓶が一つ置いてある。
七尾百合子
「やっと辿り着いたみたいですね」
春日未来
「え?百合子ちゃん?」
七尾百合子
「うん、そうだよ」
春日未来
「よかった~…世界中に私一人だけが取り残されちゃったかと思ったよー!!」
春日未来
「だって誰にも会えないんだもん」
春日未来
「それに、私、百合子ちゃんにも電話したんだよ!?」
七尾百合子
「そんな一日もありますよ」
七尾百合子
「ただ、今日は初めてなんじゃないですか?」
春日未来
「え?」
春日未来
「どういうこと?」
春日未来
「今日が初めてなのはあたりまえのことだよね?」
七尾百合子
「まだ気付いていないんですね…まだ思い出せないんですね…」
春日未来
「どういう…こと?」
七尾百合子
「いいんです、気にしないでください」
七尾百合子
「あの、ラムネ、飲まないんですか?」
春日未来
「あっ、これ?私貰っちゃってもいいのかな?」
七尾百合子
「はい、それは貴方のものですから…」
春日未来
「ん?」
春日未来
「まっ、いっか、いただきま~す!…ゴクゴクゴクゴク」
七尾百合子
「おいしかったですか?」
春日未来
「うん!お口の中がしゅわーってして…ラムネ色青春みたいな感じかな」
七尾百合子
「そうですか…それで、そこから貴方はどうするんですか?」
春日未来
「え?私?」
春日未来
「ん~、こうやって、ビー玉を取り出して~」
春日未来
「夕日をビー玉越しに、こうやって覗いてみて…」
春日未来
「それでそれで…」
七尾百合子
「この夏がずっと続けばいいのになぁ」
春日未来
「この夏がずっと続けばいいのになぁ」
春日未来
「えっ!?」
七尾百合子
「可奈ちゃんといる時、そのビー玉に向かって、そう言ったんだよね?」
春日未来
「どうしてっ…どうして百合子ちゃんがそれを知ってるの?」
七尾百合子
「だって、それは本物の春日未来が言った言葉だから…」
春日未来
「どういうこと?」
春日未来
「私は春日未来だよ?」
七尾百合子
「いいえ、貴方は春日未来じゃない」
七尾百合子
「貴方は、春日未来の未来なんです」

(台詞数: 49)