春日未来
遠くから微かに聞こえる声がこう言った。
春日未来
『未来が待ってる』______
春日未来
「おはよー!!」
春日未来
元気よくベッドを飛び出してみたけれど、誰からも返事はない。
春日未来
(そっかー。二人ともお出かけしちゃったのかな?)
春日未来
ストン…
春日未来
床に何かが落ちて転がった音、その音の方へと視線を向ける。
春日未来
「どんぐり…?」
春日未来
季節外れのどんぐりの種、それが何を意味するのか、私にはわからない。
春日未来
どんぐりを見つめていたけど、気まぐれからか、私は指でこちょんと突いてみる。
春日未来
すると、それはコロコロと弧を描いてゆっくり転がっていく。
春日未来
けれど、やがて、障害物にぶつかると、それはピタリと止まった。
春日未来
「あ、絵日記」
春日未来
私は絵日記を手に取ってみると、この夏の想い出を振り返る様に…
春日未来
思い出すように、パラパラと捲ってみる。
春日未来
「もう、ついこの間の事なのに…なんだかあっという間だったな~…」
春日未来
「でも…あれ?なんかおかしい?」
春日未来
夏の間中、ずっと欠かさずにつけてきたはずの絵日記…
春日未来
「ない…」
春日未来
8月30日、昨日の日記がつけられていない。
春日未来
「えへへ…私、うっかりして書くの忘れちゃったのかな?」
春日未来
「でも、そんなはず…」
春日未来
「というか私、29日はなにをしたんだっけ…?」
春日未来
ページを捲って戻ってみる。そこにはやはり、きちんと日記がつけられていた。
春日未来
特になんてことのない一日だったけれど…
春日未来
最後の行にはこう綴られている。
春日未来
『明日は可奈とお出かけ!とっても楽しみだなあ』
春日未来
「そっか、昨日、私は可奈とお出かけしたんだっけ…」
春日未来
「でも、あんまよく思い出せないなぁ…」
春日未来
「確か、この街を見渡せる丘にいって…」
春日未来
「それで…それで…」
春日未来
『この夏がずっと続けばいいのになぁ』
春日未来
「この夏が、ずっと、続けばいいのになぁ…」
春日未来
頭の中に響いた言葉、私はそれを繰り返し口ずさみ、噛み締める。
春日未来
私はこの言葉を、きっと、あの丘で言ったのかもしれない。
春日未来
「行けば、何か思い出せるかな?」
春日未来
「あ、でも、そんな遠回りするより、いっそのこと可奈に聞いた方が…」
春日未来
思い直して、可奈に電話をかけてみる。
春日未来
けれど…
春日未来
「…出ない」
春日未来
「ん~、困ったなぁ…これじゃあモヤモヤしたまんまだし…」
春日未来
「まるで頭の中に霞がかかったみたいに、肝心なことが何も思い出せないよ」
春日未来
「でも、まっ、いっか…どうせ暇だし」
春日未来
「せっかくだから行っちゃえばいいよね」
春日未来
「どうせなら行ける人誘っちゃえ!!」
春日未来
私は、電話帳にある番号に片っ端からかけてみた。
春日未来
「ん~…ダメだ…誰も出てくれない、というか繋がらないよ…」
春日未来
「やっぱ夏休みの最後の日って課題とかで皆忙しいのかな?」
春日未来
「あっ、私も課題…ううん、でも、こっちの方が大事だよ!」
春日未来
「いってきま~す!」
(台詞数: 50)