夏霞10:不可思議
BGM
鳥籠スクリプチュア
脚本家
親衛隊
投稿日時
2016-07-17 10:42:22

脚本家コメント
桜花集P達で送る新たな企画ドラマ集『夏霞』の第10話です。
それぞれの作者の視点で書く未来の8月31日。それは日常であるとは限らず──。
前作の主人公が出る作品って萌え……燃えますよね。
前作 由々識P
http://imas.greeーapps.net/app/index.php/short_story/info/uid/1400000000000009524/seq/102
お次はパクマンPです。乞うご期待!
http://imas.greeーapps.net/app/index.php/short_story/info/uid/1000000000000006291/seq/649

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春日未来
目覚めて早々、青ざめて飛び起きた。
春日未来
カレンダーの日付は夏休みの最後。別名8月31日。これの意味するもの、それは……。
春日未来
「宿題!」
春日未来
これはやばい。いよいよ危惧した私は光速で身支度を整え、図書館へ向かうことにした。
春日未来
何で図書館かって?
春日未来
夏休み最終日って私と同じような人が収容されてたりするんだよね。
春日未来
つまり、仲間が増えるかもしれないよね!
春日未来
そんな訳で殺人的な酷暑の中、必死に自転車を漕いでたどり着いた街の図書館。
春日未来
宿題の遂行……もとい傷の舐め合いを求め、重い扉を放つ。
春日未来
「え……」
春日未来
入ってまず覚えたのは違和感。外の喧騒とは対照に静まり返った館内、そして数字の歪んだ古時計。
春日未来
館内からは人が消えていた。
春日未来
「いない」ではなく「消えた」と印象を受けたのは、直近まで人が活動した形跡があったからだ。
春日未来
開かれたままの本、起動しているパソコン、書架に立て掛けられた脚立。
春日未来
それらを尻目に、恐る恐るホールまで足を運んだ。
春日未来
「……百合子?」
春日未来
怖さと寂しさの入り混じった空間にぽつり、見慣れた友人の姿がそこにはあった。
春日未来
「でへへ〜」
春日未来
安堵と同時に悪戯心に火がついた。忍び足で後ろに回り込み驚かせようと──。
七尾百合子
「ねえ」
春日未来
不意の呼び掛けに、私の方が虚を衝かれた。
七尾百合子
「未来は、自分以外の自分っていると思う?」
春日未来
出会うやいなや電波的な質問を飛ばす友人。無論、意味など理解出来る筈もない。
七尾百合子
「未来、宿題終わってないから仲間探しに来たんだよね?」
春日未来
「ど、どうしてそれを……!」
七尾百合子
「秘密」
春日未来
そう言うと、百合子は手に持っていた本をぱらぱらと捲った。
七尾百合子
「もう宿題を終わらせた未来もいるみたい」
春日未来
「……」
春日未来
全ての疑問がどうでもよくなった。
春日未来
「何それ!? どどどどうすればいいの!?」
七尾百合子
「先週までに終わらせる、だって」
春日未来
「駄目じゃん……。うぅ、やっぱりお先真っ暗だよ……」
七尾百合子
「そんな事ないと思うよ? 未来には無限の可能性があるって私は思う」
春日未来
「……ねえ百合子、ちょっとだけその本」
七尾百合子
「ダメ」
春日未来
「え……。あれ……?」
春日未来
急激に瞼が重くなった。体中が熱を帯びて、立っていたくないくらいにだるい。
春日未来
「……百合……子……?」
七尾百合子
「運命っていうのは一挙手一投足すら起因する程、不可視で緻密な選択肢のパズル」
七尾百合子
「あなたは奇跡的にそれを完成させて、この場所で私との出会いを果たした」
七尾百合子
「でもね、これではダメ。何故なら完成したパズルは本来作るべき物とまったくの別物だから」
七尾百合子
「未来、あなたが来るべきゴールはここじゃないんだよ」
春日未来
「すぅ……すぅ……」
七尾百合子
「……」
七尾百合子
「『桜花』の物語は、既に他者の人生が記されてた」
七尾百合子
「けれど、この名前すら与えられていない未完成の本は、現在進行形で話が進んでる」
七尾百合子
「未だ10章『不可思議』。ページはまだまだ空白。完成に至るまでの道のりは長そうだね」
七尾百合子
「夢でおやすみ。そして……いってらっしゃい、未来」
七尾百合子
「また新たな8月31日へ」

(台詞数: 50)