周防桃子
私は神だ。
周防桃子
神だから、全知全能なのだ。
周防桃子
人間には知るよしも無い事も知っている。全知全能だからだ。
春日未来
「あれぇ、静香ちゃん!こんな所で偶然だね!静香ちゃんも今から事務所行くの?」
周防桃子
………………偶然、か。
周防桃子
これほど無意味な言葉も無いだろう。
周防桃子
この世は起こるべきことしか起きないし、起きた事は全て相応の理由があって起きたのだから。
周防桃子
それを"偶然"の一言で済ませるのは、思考停止に他ならず、己の無知を喧伝するに等しい。
周防桃子
この場合も、この娘は偶然などと言っているが俯瞰的に見てみるとそんな事は全く無い。
周防桃子
そっちの黒髪の娘がこの公園を通ったのは、いつも通る道が工事で通れないからだ。
周防桃子
また、その工事は昨日ある娘がスコップで道路に穴を掘ったから行われているのだ。
周防桃子
このような遠因があったから、結果としてこの二人の娘は鉢合わせたのだ。偶然ではない。
春日未来
「あっ!翼だ!おーい、こっちこっち!翼も事務所行くなら一緒に行こうよ!」
春日未来
「それにしても驚いちゃったよ!静香ちゃんに続けて翼と会うなんて、凄い偶然だね!」
周防桃子
これも別に驚くべき事では無い。
周防桃子
この金髪の娘は、昨日買った服を事務所の男性従業員に見せたくて、いつもより早く家を出たのだ。
周防桃子
その服も、昨日この娘達の目の前で買っている。
周防桃子
金髪娘の日曜の出社時間と性格を考慮すれば、考えられない事態では無いだろう。
周防桃子
ちなみにその服は、ある女性アイドルがプロデュースしたものである。
周防桃子
一見しただけではおにぎりがモチーフとは分からない遊び心あるロゴが可愛いと評判だ。
春日未来
「あれ?風花さんと志保だ!おはようございます!朝から偶然ですね!」
周防桃子
これも偶然でもなければ驚く事でもない。ただ………
周防桃子
……ここからは少し手短に語ることにする。
周防桃子
あまりゆっくりしていると、このドラマが終わってしまうからだ。
周防桃子
私は神で全知全能だから。セリフ数が50までなのももちろん知っているのだ。
周防桃子
ともかく、この二人がこの公園にいるのは、ここが猫の名所だからだ。
周防桃子
特に日曜のこの時間に多く居る。今朝は二人で申し合わせて見物にきたのだ。
春日未来
「ん…?あっちにいるのってもしかして……」
春日未来
「やっぱり!環と美也ちゃんだ!おはよー!二人とも朝からどうしたの?」
周防桃子
この二人は、ちっちゃい方の娘の祖母から教わった猫寄せの秘技を練習中だ。
周防桃子
毎週この時間に練習するのが習慣化している。ここ最近でだいぶ習得できてきたようだ。
春日未来
「うわぁ!茜ちゃん!なんでいきなり木の上から飛び降りてきたの!」
周防桃子
目立つためだ。
周防桃子
もう少し詳しく言うと、人が集まっているタイミングで目立った方がより目立てるからだ。
春日未来
「わぁ!亜利沙さん!なんで草むらから飛び出してきたんですか!」
周防桃子
この娘のアイドル好きは筋金入りだ。これだけの人数が居れば突然現れても不思議ではない。
春日未来
「あっ!このみさんも!おはようございます、朝から偶然ですね!」
周防桃子
公園に子供は付き物だろう。居たって何も不自然じゃない。
春日未来
「あれぇ?あずささんまで!事務所に行くなら一緒に行きましょうよ!」
周防桃子
その娘は自宅近くのコンビニに行こうとしただけだ。ちなみに今日はオフだ。
周防桃子
と、まぁこのように偶然と思えるような事も、遡れば必ず理由があるのだ。
周防桃子
俯瞰的に物事を見る目があれば"偶然"とは実にナンセンスな言葉なのだ。
春日未来
「朝からみんなに会えるなんて、ラッキーな偶然だね!嬉しいなぁ♪」
春日未来
「でへへぇ♪なんだか今日は良い1日になりそう!」
周防桃子
…………この程度の事で幸福を感じられるなんて。
周防桃子
自分で作っておいてなんだが、たまに人間が羨ましくなるよ。
(台詞数: 46)