最上静香
……目の前には炎の壁、ここは地下2階、今からどこに逃げようにも最早間に合わない……
最上静香
だから私は踊る、酒とドラッグで浮いた気持ちに任せて踊る……体も、心も、燃え尽きるまで……
最上静香
……私は昔アイドルだった、小さい頃からの憧れで、トップアイドルになるのが夢だった……
最上静香
でも、15歳の夏に引退した……アイドルをするのは高校受験の時まで、そういう約束だったからだ
最上静香
当時の私には、親を黙らせるだけの実績も親を説得するだけの気概も無かった……
最上静香
だから、私は素直に従った……遊びをやめ、良い高校、良い大学、良い会社に入るために……
最上静香
……何のために?
最上静香
私の夢はトップアイドル、それ以外には無かった……良い会社で良い暮らし、それは夢に勝るの?
最上静香
己の才能の限界であればまだ納得は出来た、再起不能になる怪我でも負えば、まだ諦めはついた……
最上静香
でも、私が諦めた理由、それは本当に不可避の理由だったの……?
最上静香
燃え尽きるでも無く、水を掛けられた訳でも無く、乱暴に踏みにじられただけの私の夢
最上静香
その火種は、再び燃え上がる事も出来ずにただ私の中で燻り続けていた……
最上静香
そんな状態で勉学に集中できるはずも無く、私の成績は高1の夏から急降下……
最上静香
ギリギリで赤点を避けて高2に進級するも最早授業で何を言っているのか理解できない……
最上静香
夢を諦めたくせに親の敷いたレールもまともに進めない馬鹿な私……最低の愚か者……
最上静香
その年の冬……半分以上の教科が赤点の通知表を見た時、私の中の何かが切れた。
最上静香
今までに無い剣幕で怒る父も、人目を憚らずに泣く母もどうでもよくなった
最上静香
私は最低限の荷物と親の金を取ると、その日の夜に家を出た……
最上静香
何者にもなれない私に居場所など無いからだ、もうどうでも良い、どうにでもなれば良い……
最上静香
とは言え冬の深夜は寒すぎる、どこかに泊まらないと凍えて死んでしまいそう……
最上静香
その時に見つけたのが一軒のクラブ、皆で踊る場所なら小娘でも目立たないだろう……
最上静香
そこはとても楽しかった、初めて飲むお酒に久しぶりに踊るダンス、こんな高揚があったのか……
最上静香
その日から、私は昼はふらつき、夜はクラブに通う生活を始めた……
最上静香
素行を怪しまれる旅に店を変え、それを繰り返す内に非合法な店に通う機会が増える……
最上静香
そんな私がドラッグにハマるのはすぐだった、アッパー系が好きだ、全てを忘れられるから……
最上静香
しかしダウナー系は嫌いだ、使うと悪夢を見るからだ……
最上静香
万雷の歓声と光の海の中で歌を歌う私、そんな悪夢を見るからだ……
春日未来
あのー……もしかして、静香ちゃん……なの?
最上静香
あなた誰?人違いじゃないの?
最上静香
……本当は知っている、アイドルだった時の仲間だ、彼女は今でもアイドルをしている……
最上静香
そんな彼女に何にもなれなかった私がどうして声をかけられるだろうか……
最上静香
……それからだ、忘れようとしていた心の燻りが再燃するようになったのは……
最上静香
しかし、今からどうやって光の世界に戻れと言うのだろうか
最上静香
遊ぶ金の為、一夜の宿の為に散々女を売ってきた汚れた私なんかが……
最上静香
……誰かが「火事だっ!」と叫んだ、確かに目の前に火柱が立っていた……
最上静香
我先にと出口に逃げる者、自分が死ぬと思わずにそれをケラケラと笑う者……
最上静香
私は……火を無視して踊る事にした、今は最高に決まってる、火で焼かれても痛くは無い。
最上静香
……目の前には炎の壁、ここは地下2階、今からどこに逃げようにも最早間に合わない……
最上静香
だから私は踊る、酒とドラッグで浮いた気持ちに任せて踊る……体も、心も、燃え尽きるまで……
最上静香
そうすれば、燻った心ごと燃え尽きてくれるだろうから……
春日未来
……ってPVで静香ちゃんのご両親を説得しようと思うんだけどどうかな?
最上静香
重すぎるわよ!
(台詞数: 42)