七尾百合子
昔々ある森の中に、正直者の木こりが住んでおりました。
七尾百合子
ある日のこと。木を切るのに疲れた木こりは、森の中にある泉のそばで休むことにしました。
七尾百合子
すると、何ということでしょう。ふとした拍子に、木こりは斧を泉の中に落としてしまいました。
最上静香
ああ、どうしましょう?大切な仕事道具だというのに……ん?あれは何かしら?
七尾百合子
すっかり困り果てた木こりが泉を眺めていると、泉の中から女の子が浮かび上がってきました。
箱崎星梨花
こんにちは、お姉さん。わたしはこの泉の女神です。
七尾百合子
なんと、女の子は泉に住むと伝えられる、森の守り神でした。
箱崎星梨花
お姉さん。あなたが落としたのは、この金の斧ですか?それとも銀の斧ですか?
七尾百合子
女神の右手には太陽のように輝く金の斧が、左手には月のように煌めく銀の斧が握られていました。
七尾百合子
それらは、木こりにとって喉から手が出るほど魅力的な品々でした。
最上静香
私が…落としたもの…。
七尾百合子
しばらく悩んだ木こりは、自分がどう答えるべきかを考え……正直な答えを出しました。
最上静香
恋に落ちたわ。あなたへの、ね。
箱崎星梨花
ええっ!?こ、恋ですか!?
最上静香
ええ。わたしの嘘偽りない気持ちよ。…それで、正直者へのプレゼントはまだかしら?
箱崎星梨花
そ、そうですね…それではこの金の斧と銀の斧を…。
最上静香
私が欲しいものはそれじゃないわよ!!
箱崎星梨花
そんなこと言われても…私のどこが好きなんですか?性格ですか?見た目ですか?
最上静香
両方よ。
箱崎星梨花
初対面なのに性格がわかるんですか!?
最上静香
ええ。森のことは全て知っているわ。
箱崎星梨花
(女神よりすごい…。)
最上静香
それで…正直者は両方貰えるのよね?身も心も。
箱崎星梨花
あげませんよ!
最上静香
そんな……せっかく正直に答えたのに…正直者が馬鹿を見るとは、まさにこのことね。
箱崎星梨花
全然違います!!
箱崎星梨花
まったくもう!真面目に答えてくださいよ!
最上静香
私はいつでも真面目だけれど…あなたこそ、そんなことを聞いてどうするの?
七尾百合子
木こりがそう尋ねると……女神はにこりと笑いました。
箱崎星梨花
最近、この斧で森林を壊している悪い人がいるらしいんです。
箱崎星梨花
だから、その人にはちょっとだけお仕置きが必要しないといけないんです。
最上静香
お仕置き……ちなみにお仕置きって?
箱崎星梨花
わたしがお説教するだけですよ。……泉の中で1日くらい。
箱崎星梨花
ところで……あなたは、この普通の斧の落とし主ですか?
最上静香
…………。
七尾百合子
正直者の木こりは、しばらくどうするべきか考え、答えを出しました。
最上静香
ええ、私がそうよ。
箱崎星梨花
ようこそ、泉の中へ!
最上静香
あっ、この泉、深いッ!!ゴボボボボ!!ゴボボボボ!!
七尾百合子
女神にハグされた木こりは、そのまま泉へと引きずりこまれてしまいました。
七尾百合子
木こりが一度でも自分を偽れば、このような事にはならなかったはずです。
七尾百合子
正直に生きる…果たして、それは必ずしも正しいことと言えるのでしょうか?
箱崎星梨花
きゃーーーーーー!!!
最上静香
大人しくしなさい!生きるためには仕方ないの!
最上静香
新鮮な空気を…循環呼吸を…合法的マウストゥマウスを要求するわ!
箱崎星梨花
誰かーーーーーー!!!
七尾百合子
……………………。
七尾百合子
こうして、欲望に正直な木こりと女神は、いつまでも仲良く暮らしましたとさ。めでたしめでたし。
(台詞数: 48)