最上静香
相変わらず都市放送では塔の「改良」の話がひっきりなしに流れている。
最上静香
実際には完成したのであるが、今までの塔が不完全だった事は隠すつもりらしい。
最上静香
……これからの希望だったり発展だったり。映っているのは笑顔ばかり。
最上静香
誰かが無理矢理に希望を売っている。そんな感じがした。
最上静香
誰か、誰だろう。
最上静香
こんな風に世界を動かそうと。そんな大胆な事をずっと続けている人物は一体誰なのだろう。
最上静香
いや、別に一人では無いかもしれないけど。
最上静香
……いずれにせよ。
最上静香
この「希望」は、大きな犠牲の上に出来た物だ。
最上静香
それも、必要では無かった犠牲。塔の外では私が、少なくとも私だけはそれを知っている。
最上静香
私はモニタの電源を切った。こんな物は、悪趣味にしか感じない。
最上静香
さて、ここで状況を説明しよう。塔の上で女神と楽しいルームシェアをしていた私だが。
最上静香
「私が絶対ここから安善に出してあげるからね! 静香ちゃんは『その人』を探してきてね!」
最上静香
……その安全な方法はまさかの女神お手製の気球にぶら下げられ塔の上から放り出されるという物だ
最上静香
非常脱出用のカプセルに入っていたとは言え彼女の住まいは雲の上、
最上静香
有無を言わさずカプセルに詰め込まれた私は、宙に浮いた瞬間に気を失っていた。
最上静香
何故か無事に地上へ降りられたみたいだった。着地した時のことは一瞬覚えている。
最上静香
偶然柔らかい場所に落ちた事、人がたくさんいた事、女の人が半分埋葬されていた事、
最上静香
そして女の人が誰かと少し話してから出土されて、すぐに何処かへ連れて行かれたこと。
最上静香
……
最上静香
どうやらそこは噂の教会で、その女の人はシスターだったそうだ。
最上静香
儀式の為に大地と一つになっていたところだったらしい。
最上静香
連れて行ったのはどういう連中かは分からないそうだ。私には大体想像はつくけど。
最上静香
それから私はここでやっかいになっている。シスターがそうするように言ったそうだ。好都合。
最上静香
女神が言った『その人』。この状況全てに終止符を打てる人物を直ぐにでも探したいが、
最上静香
少し前から周りは例の連中で溢れかえっている。きっと彼らにとっての黒幕を探し回っているのだ。
最上静香
私の顔は確実に知られてしまっているので、慎重に動かなければならない。
最上静香
なのでこの数日は教会でずっと考えているのだが……
最上静香
確かここは女神を信仰しているはずだが、少し妙だった。
最上静香
女神の写真や像はおろか、メガネの一つもどこにもないのだ。(たい焼きはある)
最上静香
確かに塔の人以外は存在すら疑う人もいるくらいだから仕方ないのかもしれないけど。
最上静香
これじゃあ、女神がそこら辺を歩いていても誰も気づかないかもしれないな……
最上静香
……あ。
最上静香
今気づいたけど、その人ってどうやって探せばいいんだ。
最上静香
この街にいるかどうかも分からないわよね。あれ、外にいるんだったら探しようがないじゃん。
最上静香
っていうか、その人を見つけたとしてもどうやって確かめれば良いんだ。
最上静香
運命を変える力があるかどうかなんて私初見じゃ分からないわよ?
最上静香
……詰んだ。
最上静香
……
最上静香
また、なんとなくモニタの電源を入れた。引き続き塔と悪趣味な報道が続いている。
最上静香
やっぱり、私には分からない事が多すぎる。
最上静香
一番分からないのは女神の存在だ。塔の完成には最も優れた頭脳が必要だったはず。
最上静香
ならば、何故当初は女神が、あの天然メガネがその候補だったのだろう。
最上静香
もしかして、ああ見えて実は稀代の大天才……
最上静香
もしかして、ああ見えて実は稀代の大天才には見えないしなあ。
最上静香
……あの塔は確かに今の人類において大切な物かもしれない。
最上静香
それを手に入れる為には、犠牲は不可欠な物なのかもしれない。
最上静香
それでも、知った今は気色悪く感じてしまう。絶対に彼らと同じになりたくない。
最上静香
……さて、
最上静香
……さて、これから何をしよう。
(台詞数: 50)