ReRise第29話『ファイナリスト』
BGM
MAINBGM_RMX
脚本家
遠江守(えんしゅう)P
投稿日時
2017-04-26 00:05:51

脚本家コメント
28、29話一挙掲載です。

コメントを残す
最上静香
…投票が終わった。
最上静香
私は、緊張で息が止まりそうになりながらも、なんとかスクリーンを見上げる。
最上静香
パッと映し出された、その数字を見て…。
最上静香
「え…?」
最上静香
思わず声を上げたのは、信じられない数字が目に入ってきたから。
最上静香
最上静香112票、真壁瑞希68票…!?
最上静香
私の勝ちだけど、こんなにも差をつけて…?
最上静香
予想外の結果に呆然した私は、声をかけられるまで、その場にただ立ちつくしていた。
真壁瑞希
「握手してください、最上さん。」
最上静香
半分気の抜けたまま握手に応じる私に、瑞希さんがふっと笑顔を見せる。
真壁瑞希
「勝つつもりでしたが、返り討ちでした。がっくり。」
最上静香
口ではそう言いながらも、瑞希さんは清々しそうだった。
最上静香
瑞希さんは、どうしてこんな顔を…?
最上静香
そして、残された最大の疑問を、私はどうしても瑞希さんに尋ねずにはいられなかった。
最上静香
「あの…。ソロ曲を歌わなかったのは、なぜですか?」
最上静香
負けたばかりの人に、非常識だったかもしれない。でも、瑞希さんは口をつぐまなかった。
真壁瑞希
「私は、最上さんを偵察して、『piece of cake』を歌うということを知りました。」
真壁瑞希
「歌を聞いて、心を揺さぶられました。この状況で他人のために歌えるその気高さに。」
真壁瑞希
「そして、嫉妬しました。人と人は、これほどまでに強い絆で結ばれることができるのかと。」
最上静香
その言葉の端々に、無感情に見える瑞希さんの激しい感情が伝わってくる。
真壁瑞希
「『…In The Name Of。…LOVE?』を歌う方が賢かったかもしれません。」
真壁瑞希
「でも、私の『Cut. Cut. Cut.』も、周防さんとの絆の証。」
真壁瑞希
「負けるものかと、意地を張ってしまいました。結果はこの通り、完敗でしたが…。」
最上静香
「そんな…。瑞希さんは完璧でしたし、私は付け焼き刃だったのに…。」
最上静香
いいえ、と瑞希さんは首を横に振る。
真壁瑞希
「私は、たしかに完璧に仕上げたつもりでしたが、最上さんは完璧を超えていました。」
真壁瑞希
「その証拠は…これです。」
最上静香
瑞希さんが私を、まるでマジシャンが見栄を切るように、ぱっと両手で指し示すと。
最上静香
『静香ちゃーん!』『静香~!』『静香!!』『サイコーだったよ!』『ステキ~!』
最上静香
たくさんの私の名前を呼ぶ声。すごい…!こんな歓声、私一人のときには聞いたことがない…!
真壁瑞希
「さあ、胸を張ってください。ファイナリスト。」
最上静香
瑞希さんの言葉が胸に染みて、ようやく私は自分の勝利を実感した。
最上静香
ファイナリスト。私は、とうとう決勝まで…。
最上静香
嬉しさと喜びが胸をふさぐくらいにこみ上げてきて、声が出ない。
最上静香
いつまでもやまない声援に、私は精一杯の感謝を込めて、手を振って応えるだけしかできなかった。
最上静香
…そして、しばらくして舞台袖に戻った私に、もうひとつ嬉しい驚きが。
最上静香
「志保…。」
最上静香
私を出迎えたのは、『クレシェンドブルー』のみんなだったけど、その先頭に志保がいた。
北沢志保
「おめでとう。」
最上静香
素直な祝福に、一瞬えっと思ったけど。
北沢志保
「…でも、あれじゃまだまだね。ずっと私に引っ張られていたじゃない。」
北沢志保
「だから、今度私の隣で歌うときには…しっかりついてきなさいよ?」
最上静香
…志保らしくひねくれた言葉で安心した。私に対してしおらしい志保なんて、志保じゃない。
最上静香
そして、これは志保なりに私を認めてくれている、精一杯の表現なのよね。
最上静香
「クスッ…。ふふっ…。ふふふっ…!」
北沢志保
「な、何よ…?」
最上静香
悪いとは思ったけど笑いが止まらなかった。
最上静香
憮然とする志保を一人残して、他のみんなにも笑顔が伝わっていく。
最上静香
今は、前の苦労も先の不安も、すべて忘れてただ笑っていよう。
最上静香
この喜びを仲間と分かち合える。それは、私がこの手でつかんだ、何より貴重なトロフィーだった。

(台詞数: 50)