ReRise第26話『ただ一人のための』
BGM
REFRESH_RMX
脚本家
遠江守(えんしゅう)P
投稿日時
2017-04-22 23:09:53

脚本家コメント
ここから佳境に入りますので、一日一話は無理かもです。出来次第の更新で。

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最上静香
貴音さんの話に思うところはあったけど、私はそれを忘れたかのようにレッスンに打ち込んでいた。
最上静香
話を信用していないわけじゃなくて、むしろ重く受け止めているからこそ。
最上静香
貴音さんが私にかけた言葉は、目の前の瑞希さんとの一戦よりも、もっと遠くの…。
最上静香
おそらくは、私と琴葉さんの決勝戦を指して言ったのではないかという直感がある。
最上静香
それが正しければ、私が瑞希さんに勝てると、貴音さんが何かの確信を持っているということ。
最上静香
そして、それ以外に何も無かったのは、きっと自分の思う通りにやれということだと思う。
最上静香
こうして、時間は濃密なレッスンの中でたちまち過ぎていって…準決勝の日が来た。
最上静香
私は準備を整えて、劇場の通常公演を見ながら、その時を待っている。
箱崎星梨花
「静香さん。お水、どうぞ!」
最上静香
「ありがとう、星梨花。」
最上静香
星梨花の差し出したペットボトルを受け取って、私は軽く喉と口を湿らせた。
最上静香
私のそばには、星梨花と麗花さんが付いて、何かとサポートしてくれている。
最上静香
野々原さんは…この場には居ないけど、もっとすごいことを。
最上静香
劇場の通常公演に出演するという、盛り上げ役を買って出てくれていた。
最上静香
まだ、自分が負けた悔しさだって、残っているはずなのに…。
最上静香
その心の強さと優しさには、尊敬以外の言葉が出てこない。
最上静香
私は素敵な仲間に恵まれている。本当にそう思う。
最上静香
…だからこそ、私は『最後の一人』にも、私を見てほしいと思った。
最上静香
「星梨花。志保に、伝えてくれた?」
最上静香
私の問いかけに、星梨花はコクコクとうなずく。
箱崎星梨花
「はい、確かに伝えました。『見に来ないと絶対後悔するわよ。後で泣いても知らない』って…。」
最上静香
少し挑発的だったかもしれないけど、私たちの間ならこれでいい。
最上静香
その後は…私はアイドルだから、ステージの上で表現してみせる。
最上静香
…演者が舞台袖に戻ってきた。そろそろ私の出番ね。
最上静香
練習は積んできた。勝ち目が無いわけじゃない。それでも、瑞希さんは…。
最上静香
その時、私の後ろから柔らかいものがかぶさってきて。
北上麗花
「静香ちゃん、ぎゅ~!!」
最上静香
れ、麗花さん?
最上静香
麗花さんは私にハグしたまま、優しい声で。
北上麗花
「大丈夫だよ♪静香ちゃんは、しっかりできてるからね。」
北上麗花
「私はね…もし他の人とこの曲を歌うなら、静香ちゃんと歌いたいなって思うな。」
最上静香
この数日、私のレッスンのパートナーとなってくれた麗花さんは、そう言ってくれた。
最上静香
そのとき、合図が出た。ついに、私のステージが始まろうとしている。
最上静香
「ありがとうございます。では…行ってきますね!」
箱崎星梨花
「静香さん、頑張ってくださいね!」
北上麗花
「静香ちゃん、ファイト~♪」
最上静香
二人の応援を背に、私は舞台袖からステージに歩み出る。
最上静香
私の姿が見えた瞬間に、熱風のような歓声が、客席から吹きつけてきた。
最上静香
ここにいるファンも、準決勝はさらに熱い戦いになると期待しているようね…。
最上静香
期待に応えられるかは、わからない。これは、ただ一人のために歌う曲だから。
最上静香
けれど、もし私の歌が志保に届く力を持つのであれば。それは、ファンの心も動かすと信じて。
最上静香
ステージの上で一礼して、私はファンに語りかけた。
最上静香
「これは、私の歌ではありませんが…私が今一番歌いたい曲です。」
最上静香
「不慣れかもしれない。似合わないかもしれない。でも、一生懸命歌います。」
最上静香
決意を込めて、私はその曲名を口にする。
最上静香
「聞いてください…『piece of cake』。」

(台詞数: 46)