最上静香
緑の光が、乱れ舞った。
最上静香
暗闇から照らし出されたシルエットを見て、観客が驚きの声を上げる。
最上静香
『深層マーメイド』。
最上静香
デュオの演者として、ステージに立つのは、この曲の歌い手である翼。
最上静香
そして、もう一人の歌い手である響さんよりも、さらに小さなそのシルエットは…。
最上静香
周防桃子。
最上静香
悲恋を感じさせる歌の、しかもあの響さんの代打を務めるのが、わずか11歳の女の子。
最上静香
それでも。それなのに。
最上静香
桃子は翼にまったく遅れをとらず、堂々としたパフォーマンスを見せていた。
最上静香
観客席の奥まで突き抜けるような歌唱力と、見せ方を知り尽くした、圧倒的な表現力。
最上静香
最初は意外さにどよめいた観客も、歌が進むにつれて、すっかり惹き込まれてしまう。
最上静香
…あのライブバトルトーナメントから、もう2か月になるのね。
最上静香
結果こそ準優勝に終わったものの、桃子は美希さんと互角の勝負を繰り広げた。
最上静香
それからというもの、注目度は跳ね上がり、重要なポジションを任せられることも増えている。
最上静香
今では、あの子を小学生だからと甘く見る人はいない。
最上静香
…私だけ、ね。
最上静香
思い返せば、今でも苦いものがこみあげてくる。
最上静香
トーナメントで私と対戦する直前の桃子は、お世辞にも調子が良いと言えなかった。
最上静香
それで安心しきった私は、持ち歌を温存して桃子を迎え撃とうとして…そして、負けた。
最上静香
直前で貴音さんが桃子を立ち直らせたそうだけど、そんなのは関係ない。
最上静香
貴音さんが言った通り、すべては私の油断と慢心が原因。
最上静香
桃子にもファンにも、そして私自身にも、取り返しのつかない失礼なことをしてしまった。
最上静香
しばらくの間、私は後悔と申し訳なさで、皆に心配されるほど落ち込んでいた。
最上静香
…ある可能性に気が付くまでは。
最上静香
ライブバトルトーナメントは、第2回からは枠を拡大して16人の出場者が選ばれるようになった。
最上静香
つい先日、第3回が終わって、あとは最後の第4回を残すのみとなっている。
最上静香
これで、765プロのすべてのアイドルがトーナメントに出場することになるのだけれど…。
最上静香
8+16+16=40。第4回の時点で、未出場のアイドルは残り10人。
最上静香
それなのに、第4回のトーナメントの出場者数は16人とアナウンスされていた。
最上静香
…敗者復活枠がある。
最上静香
そう気付いてから、私は自分にできるあらゆることをやったと思う。
最上静香
練習で手を抜いたことなんてなかったけど、もっと一生懸命に、新しいことにも挑戦して。
最上静香
振られた仕事は、どんな仕事でも文句ひとつ言わないどころか、すべて笑顔で積極的に。
最上静香
その成果が出たのか、プロデューサーから、私が敗者復活枠の一人に選ばれたと伝えられた。
最上静香
私は、勝ち上がらなければならない。
最上静香
そう決意させたのは、最近劇場内でまことしやかに囁かれている、一つの噂。
最上静香
各大会の優勝者と準優勝者を集め、最後の、そして究極のトーナメントが開催されるのだという。
最上静香
第一回の準優勝者、桃子。
最上静香
そして、第二回で優勝した貴音さん。
最上静香
二人に並び立つ資格を手に入れるためには、また頂点を目指す必要があった。
最上静香
…これは、リベンジではないわ。
最上静香
私の思うことは…。
最上静香
最上静香と言うアイドルのかたちを、もう一度みんなに示したい。
最上静香
そして今度こそ、真摯に、私の全てをもって、あの二人に応えたい。
最上静香
それに相応しい場に。あの高みに、私は立つ。
最上静香
だから復讐ではなくて…これは、再起。
最上静香
私の、再起(リライズ)。
(台詞数: 47)