静香のグルメ~二月の博多出張編~
BGM
TOWN_RMX
脚本家
平沢ヒラリー
投稿日時
2017-02-24 14:07:42

脚本家コメント
久しぶりに因幡うどんを食べた記念に。

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最上静香
「柔らかい…!?」ファーストコンタクトはそれだった。
最上静香
福岡でのロケ。無事終了し、帰ろうとする私達に共演した地方タレントさんとの会話。
最上静香
「お疲れ様静香ちゃん、今日はこっちに泊まるとね?」
最上静香
「いえ、夕方の飛行機で帰ります。せっかくですからラーメンはどこかで食べるつもりですけど」
最上静香
「ラーメン?何言いよっと、静香ちゃんうどん好きっちゃろ?福岡でうどん食べんでどうすっと。」
最上静香
「え?そりゃ好きですけど。福岡ってラーメンが名物なんでしょう、だったら…」
最上静香
「東京の人はこれやもんねえ。福岡はうどんも美味いんよ、てかそもそもうどんの発祥は福岡よ?」
最上静香
「ええっ!?」
最上静香
…というわけで。空港にあるここなら間違いないから、とオススメされて来たのだけれど。
最上静香
「何これ…」 そのうどんは見事に私の固定概念を覆してくれた。
最上静香
よくある讃岐うどんのようなコシのある麺ではなく。そして、箸で持ったら切れそうな程柔らかい。
最上静香
出汁は薄い。色は付いているが丼の底が見えるほど。出涸らしのお茶、という感じだろうか。
最上静香
「うーん、これは…」この手のうどんを食べた事はある。しかし、大体に於いてほぼ外れだった。
最上静香
「何よこれ、うどんはコシが命よ?それなのに。出汁だってもう少ししっかり味が付いてないと。」
最上静香
心の中で文句と、あのタレントさんへの恨み言を言いつつ口へ運ぶ。どうせまずいに決まって…
最上静香
「あ。」
最上静香
…美味しい。讃岐うどんのような歯ごたえは無いが、口の中にスルスルと入っていく。
最上静香
啜るというより運ぶ感じ。そして、口の中で程よく味わえて。
最上静香
なるほど、そういう事か。あのタレントさんが言っていた事を思い出す。
最上静香
「福岡のうどんは讃岐うどんとは全然違うんよ。食べたらびっくりするからね!」
最上静香
…うどんって、コシが命なんだと思っていた。コシの無いうどんは失敗作なんだって。
最上静香
人間だってそうだ。芯の通った、しっかりした生き方。それが一番なんだって、ずっと思ってた。
最上静香
けど、そうじゃない。柔らかいうどんだって、こんなに美味しいんだもの。
最上静香
色んな生き方がある。それを認めなくてはならない。そう、このうどんのように。
最上静香
「恐るべしね。ありがとう博多の人。そして…福岡うどん。」
最上静香
さて。食事を済ませた後、私はスマートフォンを手に取る。
最上静香
案の定、着信がビッシリだ。これもアイドルの宿命だろう。
最上静香
「ほんとにもう、仕方のない人ね。博多うどんみたいに柔らかくなれないのかしら」
最上静香
心の中で文句を言いつつ、私は電話を掛ける。慣れ親しんだ声がすぐに出てきた。
最上静香
「もしもしプロデューサー。今どこか?空港のうどん屋さんですよ、それが何か…遅刻?」
最上静香
……
最上静香
「固い事言わないで下さい。もっと柔らかく生きないとダメですよ、このうどんみたいに…ね?」

(台詞数: 32)