最上静香
ねえ、ランニングの途中よね?
最上静香
雑居ビルの隙間なんか通って、どこに行くのよ。
北沢志保
関係ないでしょ。付いてこないで。
最上静香
気になるじゃない。
北沢志保
気にしなくて結構。どうせ何もないから。
最上静香
何も?
北沢志保
そうよ。
最上静香
……どうしたの? 急に立ち止まって。
北沢志保
着いたのよ。邪魔しないで。
最上静香
着いたって……何もないじゃない。
北沢志保
だから言ったでしょ。何もないし、関係ないって。
最上静香
それ……花?
北沢志保
花以外に見える?
最上静香
アスファルトに咲くなんて強いのね。
北沢志保
……。
最上静香
ここは日も当たらなそうなのに。
北沢志保
……アスファルトに咲く強い花。
最上静香
……?
北沢志保
随分と使い古されたフレーズよね。
北沢志保
でもね、どれだけ称賛を浴びたところで所詮は雑草なのよ。
北沢志保
一生、日の目を見ずに陰で暮らして。
北沢志保
そして、死んでいくだけ。
最上静香
……まさか、それを忍びなく思って水をあげてるの? わざわざ自販機で買ってまで。
北沢志保
勘違いしないで。これは単純に水分補給の為よ。
最上静香
……。
北沢志保
……。
北沢志保
静香。私はね、雑草だからって劣っているとは思わない。
北沢志保
他の花と同じように咲いて、こうして狭い空を見上げてる。
北沢志保
もしかしたら、明日には誰かに踏まれて立ち直れないかもしれない。
北沢志保
あるいは、いたずらに摘まれるかもしれない。
北沢志保
それでも……いえ、だからこそ。
北沢志保
排気で汚れた姿なんかじゃなく、凛として咲いて欲しいのよ。
最上静香
優しいのね。
北沢志保
優しくなんかない。むしろ、この感情は醜いものよ。
最上静香
この前のオーディション……かしら。
北沢志保
……。
最上静香
志保が雑草に自己投影なんて……柄じゃないわね。
北沢志保
なんですって……!
最上静香
私の知ってる志保はっ!
最上静香
……いつだって、誇りを持って凛と咲いているわ。
北沢志保
え……?
最上静香
1回の失敗なんかで挫けないし、仮に挫けたとしても上を向き続ける強い子なの。
北沢志保
な、なによそれ。慰めてるつもり?
最上静香
そんなつもりはないわ。だって、私たちはライバル同士じゃない。
最上静香
……でもね、知ってる? 路傍の草は綺麗に咲く花を常に羨んでいるの。
最上静香
私も、あんな風になれたら……って。
北沢志保
どの口が言うんだか。
最上静香
それって、認めてくれてるってことかしら?
北沢志保
……ふん。
(台詞数: 49)